米朝間での「舌戦」が盛んになり、緊張が増す朝鮮半島情勢。韓国は同盟国として、あくまで米国の側に立つ一方、朝鮮半島での戦争に徹底的に反対する姿勢を明かしている。だが、こうした受け身の姿勢に疑問を呈す声が韓国内で高まっている。南北関係の画期的な変化をもたらし得る「大胆で冒険的なアプローチ」の必要性を説くコラムを掲載する。

金東葉(キム・ドンヨプ)・慶南大極東問題研究所研究教授

著者は北朝鮮研究に定評のある慶南大・極東問題研究所の金東葉(キム・ドンヨプ)研究教授。海軍士官学校経営科学科を首席卒業後、国防大学で安全保障学修士、北韓大学院大学で北韓学博士。海軍に19年務め、中領(中佐)で退役。国防部北核企画担当、南北軍事会談政策担当などを歴任した。

なお、本コラムは韓国の出版社『チャンビ(前・創作と批評)』社サイトに8月9日に掲載された。同社の許可の下、本紙が翻訳した(翻訳=徐台教)。

「南北朝鮮のマイ・ウェイ」(金東葉・慶南大極東問題研究所研究教授)

8月危機説の中、新政府の北朝鮮政策に対する期待と心配が交錯する。新政府が発足してからの3か月が、まるで3年が経ったように感じられる。政府は米韓首脳会談と「ベルリン構想」の発表以降、初めての後続措置として、北朝鮮に軍事会談と赤十字会談を同時に提案した。

我々の対話提案にも関わらず、北朝鮮は7月だけでも2度、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した。国連安保理は「北朝鮮制裁決議2371号」を採択した。北朝鮮制裁の実効性に対しては依然として議論があるが、金正恩はこのような状況を知らないほど純粋ではないだろう。

北朝鮮はすぐさまこれを非難する「政府声明」の発表と共に、総参謀部と戦略軍司令部の報道官声明を通じ「グァム包囲射撃」の脅しをかけている。どんな圧迫にも屈服せず、自身の道を進むという「マイ・ウェイ(my way)」戦略だ。出口でも入口でも楽な突破口は見つからない。

こうした状況で、新政府の北朝鮮政策には多くの内容が込められており、深い考えが沁み込んでいる。どの一方にも偏らない慎重さと均衡感を持とうとする努力が詰まっている。北朝鮮政策であるから、当然北朝鮮を考慮しているだろう。さらに米国はもちろん、中国も気にして、国民世論も考えたであろう。

心配の種が多く、確かめることが多いため、どんな決定を下すのも簡単ではない状況だ。北朝鮮と米国、国内政治の中で、どこに優先順位を置くべきか悩ましいはずだ。




変化した状況に合う発想の転換を

今回の政府が発足する際に抱いた北朝鮮に対する認識は、現実よりも期待感が先走ったようだ。北朝鮮が、新たにスタートした文在寅政権に対する期待と共に我々の対話提案を考慮し、挑発を自制するという希望と催眠に陥っていたのかについての反省が必要だ。

10年前と今では、北朝鮮も変わったし、世の中も変わった。しかし今回の政府の安全保障ライン(編注:安全保障の役職者たちを指す)は、変化した舞台をしっかりと読めていないようだ。当然あると思われていたICBM発射に対しても、もしかしたらという期待感が挫折と絶望感に変わる中で、計画したすべてのものが一瞬にして飛んでしまった。予想可能だった最悪の状況を念頭に置かず戦略を立てたからだろう。

また、今まで提示した北朝鮮政策を見ると、変化に適応する新しさが足りない。ややもすれば過去に描いてきた、9年間キャビネットの中に保管してきた埃の積もった北朝鮮政策を引っ張りだしてきたかのように見える。

「凍結入口論」は1994年ジュネーブ合意の際の遺物であり、「非核化-平和体制の交換」もやはり2005年の「9.19共同声明」に出てきた過去の話だ。単純な太陽政策の思い出をもってしては、今の北朝鮮を誘引するのも、米国と中国と説得するのも難しい。完全に新しい絵を描かなければならない。与えられた条件と環境の変化に対する確固とした認識と評価を基に、北朝鮮政策でも根本的な発想の転換が必要なときだ。

いま重要なことは、進みもしない運転席に座っていることではない。それよりも運転手を動かすことのできる地図を持つことが重要だ。北朝鮮の核問題を解決するための精巧な韓国型ロードマップ、名付けて「新ペリープロセス」を作るべきだ。(編注:ペリープロセスとは、1999年10月に米国のペリー元国防長官がまとめたもの。米国による経済制裁の解除、北朝鮮の核開発の中断、米朝関係の正常化など、段階を踏んだ核問題の解決を提案した)

北朝鮮の核能力を「過去(すでに作られた核弾頭)」、「現在(核施設、核分裂物質の量的増大)」、「未来(核実験とミサイル試験発射など、高度化や質的な向上)」に区分する必要がある。

「未来」の核の猶予、「現在」の核の凍結・不能化、「過去」の核の完全な廃棄および段階別の検証とつなげ、北朝鮮の「過去(制裁)」、「現在(不可侵、平和体制)」、「未来(体制の保障)」にまたがる安全保障面での憂慮を取り除く「大原則(6者非核化-4者平和フォーラム-南北/米朝両者)」と「包括的(安保-経済)ロードマップ」の作成が要求される。

文在寅大統領は去る米韓首脳会談と、最近のトランプ米大統領との電話会談を通じ、北朝鮮の核問題が必ず平和で外交的な方法で解決されるべきと強調した。ただ、北朝鮮の挑発が続く限り、強固な米韓同盟から来る「力の優位」による、強力な圧迫と制裁を先行させなければならないという認識も共にした。

北朝鮮のICBM発射に対応し、THAADの追加配備を電撃的に決めもした。トランプの「最大の圧迫と関与」という、制裁と対話を並行する矛盾した非核化戦略に同調し、米韓同盟の強化に全力を注いでいる構図だ。まず米国を説得することが必要だと言う、戦略的な判断による計算された行動かもしれない。政府が現状では制裁と対話を同時に行うことが不可避と見ているにしても、今は制裁と圧迫だけに傾いているのが事実だ。

大胆なアプローチを推進する時だ

何よりも言葉には節度が必要だ。文大統領は「北朝鮮と対話をしてみたか」というトランプ大統領の質問に「北朝鮮が核を放棄したり廃棄するまで、制裁を圧迫を行うべきで、今は対話局面ではないと思う」と答えた。康京和(カン・ギョンファ)外交部長官の「制裁案が通過してうれしい。米国にお祝いしたい」といった言葉は、南北関係をより難しくする可能性がある。

米韓首脳電話会談を行う文在寅大統領
7日朝、米国のトランプ大統領と電話会談を行う文在寅大統領。ラフな格好だ。通話は安倍首相とトランプ大統領の会談よりも4分長い、56分間行われた。写真は青瓦台提供。

逆に「朝鮮半島で数千人が死んでも関係ない」というトランプ大統領の非常識的な発言に対し、強く抗議するべきだった。言葉一つをもって評価することは難しいが、今の(韓国政府の)人材では対話局面に転換するための政策企画力が足りないばかりか、北朝鮮へ特使を送りホットラインを復元するという、最小限の意志と推進力すらも無いように見える。

実は、対話を始めるためには条件は必要でない。(韓国政府が)主張するように、制裁が対話の手段になることはない。条件を作るために対話を行うのである。要件が揃ってこそ対話を始められるというのは、過去の戦略的忍耐と別段変わらない。

米国の容認や、中国・国際社会の協力を得ながら北朝鮮を圧迫することで、北朝鮮を対話に引っ張り出すことも難しい。この程度の高い支持率であるのにも関わらず、国内政治的な事情から躊躇しているとすれば、今後も機会はないだろう。北朝鮮政策をひたすら南北関係としてだけ見ることはできないが、今は他の何よりも南北関係を優先しなければならず、そうできる機会だ。

今の状況では、北朝鮮政策は国内政治や国際社会に対する考慮よりも、大統領の意思と決断を通じたより大胆な冒険的なアプローチが必要だ。我々の北朝鮮政策もやはり、何にも左右されない「マイ・ウェイ」が必要だ。北朝鮮が我々の提案を受け入れず対話が成り立たなかったとしても、私たち正しい道だと考えるならば、そのまま実践すればいい。軍事境界線での拡声器のスイッチもそのまま切ってしまえばいい。

米韓連合訓練の問題も、我々が米国に先に投げかける自信が必要だ。その道は今まで一度も行ったことのない道かもしれない。しかし我々はすでにそのように行動できる十分な自信感を得ている。ろうそくで証明したし、その自信感と力をすでに新しい政府に託した。その力を正しく使えていない点がもどかしいばかりだ。与えられた複雑な環境を考慮しつつ、単純に結論を下す時ではないだろうか。

Copyright (c) 2017 by Dong-Yub, Kim
Originally published in Changbi Weekly. Reprinted by permission of Dong-Yub, Kim through Changbi Publishers, Inc.




この記事が気に入ったら
いいね ! をお願いします。

Twitterで編集長・徐台教を