7月に2度にわたるICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験を行った上で、米国に向けて「我が国の戦略的地位を認めるか、アメリカ帝国の終焉を迎えるか」と果たし状を突き付けた北朝鮮。核弾頭を搭載するICBMの完成を目指し脇目も振らず突き進む同国に対し、米韓はあくまで「非核化」を目標に圧迫を強めていくことで一致した。

2度目のICBM発射実験後はじめて米韓首脳が電話会談

7日朝、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と米国のドナルド・トランプ大統領は電話会談を行い、「米韓が緊密に強調しつつ、国際社会との協力の下に北朝鮮に対する最大限の圧迫と制裁を課し、北朝鮮に核・ミサイルプログラムを放棄する正しい選択をさせなければならない」という点に合意した。

米韓首脳電話会談を行う文在寅大統領
7日朝、米国のトランプ大統領と電話会談を行う文在寅大統領。ラフな格好だ。通話は安倍首相とトランプ大統領の会談よりも4分長い、56分間行われた。写真は青瓦台提供。

朴洙賢(パク・スヒョン)青瓦台(大統領府)報道官が同日の記者会見で伝えたところによると、文大統領は去る7月4日と28日のICBM発射実験の際「米国が対様な軍事示威措置を取ってくれた点」を評価した。

これはB-1B爆撃機の朝鮮半島上空での訓練飛行や、東海(日本海)岸で行われた韓国の国産弾道ミサイル「玄武-2A」と米国の「ATACMS」の合同発射訓練を指す。米韓首脳は「北朝鮮の追加挑発を抑止するための共調を続けていく」とした。

また、文大統領は「ミサイル指針改定」にも言及した。これは2012年に米韓間で決めた現在の「射程距離800キロ、弾頭重量500キロまで」という韓国産ミサイルの限度値を「弾頭1トンまで」に変えるものだ。

今年10月もしくは11月に開催される「米韓安保協議会(SCM)」で議論されることになっていたが、韓国側はこれを早めることを、6月末の米韓首脳会談の時から求めてきた。

文在寅大統領とトランプ大統領握手
6月30日(現地時間)、共同記者会見を終えて握手する文在寅大統領とトランプ大統領。写真は青瓦台提供。

聯合ニュースによると、米国防相のデイビス報道官は7日、「(ミサイルの)制限は変更される可能性がある。現在韓国側と議論中」と明かした。一方で「時期は分からない」とも語っている。

興味深いのは、「ミサイル指針改定のためにTHAAD(高高度防衛ミサイル)4基の臨時配備を決めた」という文大統領の発言だ。北朝鮮への抑止力を最大限に高めるという、文大統領の北朝鮮政策の一翼をよく表す内容といえる。

両首脳はまた、8月5日に国連安保理で採択された「北朝鮮制裁決議2371号」についても「北朝鮮の態度変化を引き出すための契機になることを期待する」と一致した見解を示した。

この制裁により、北朝鮮の外貨収入の3分の1が減ると見られ、核・ミサイル開発の開発スピードが落ちることが期待されている。制裁については別記事でまとめたい。

韓国は米国よりも複雑 「2種類の対話」が存在

文大統領はまた、電話会談の中で「米韓両国が『力の優位』に基づく強い圧迫と制裁を通じ、究極的に北朝鮮を核廃棄のための交渉の場に引き出すために共同で努力する一方、核の廃棄という正しい選択をする時には対話の門が開かれていることを見せる必要がある」と語った。

また、「朝鮮半島で二度と戦争の惨状が起きることを絶対に認められない以上、北朝鮮の核問題を米韓間の緊密な共調を元に平和的・外交的な方法で解決していかなければならない」と強調したとされる。




一方、トランプ大統領は文大統領に対し「北朝鮮との対話をしてみたか」と問いかけたという。

青瓦台の朴報道官によると、主に文大統領が話し、トランプ大統領が相槌を打つことで行われたこの日の電話会談の中で唯一、トランプ大統領が投げかけた質問だとのことだ。

文大統領はこれに「北朝鮮が核を放棄・廃棄する時までは制裁・圧迫を行う時であり、今は対話する局面ではない」と答えた。

さらに「(現在提案中の)対話の本質は、赤十字会談を通じた離散家族再会という人道的措置と、南北軍事当局会談は南北間の緊張緩和と軍事当局間ホットラインの復元にあり、核とミサイルについての対話でない」という点を説明したという。

韓国国防部と赤十字社が北朝鮮側に会談を正式提案 「新ベルリン宣言」を実行に

この一連のやりとりからは、文大統領の「制裁(圧力)と対話」という北朝鮮政策の現住所を知ることができる。

北朝鮮の核・ミサイル問題と、南北関係を同時に発展(進展)させる基調はそのままに、経済制裁・軍事的圧力を最大限に高め、対話を2種類に分けて進めていくというものだ。

2種類の対話とは、人道支援や離散家族再会、当局間チャネルの稼働といった「制裁中であっても常に存在しなければならないと考える対話」と、「核・ミサイル廃棄に関する対話」のことだ。

前者は南北関係の主導権を韓国が握るための手続きであるため随時進める一方、後者は「核とミサイルの問題を解決する主体は米国を中心とする国際社会」(朴青瓦台報道官)という前提に基づき、韓国はあくまで歩調を合わせる存在になる、ということだ。

サインする金正恩朝鮮労働党委員長
7月27日、2度目のICBM発射実験にサインする金正恩朝鮮労働党委員長。写真は北朝鮮の朝鮮中央通信より引用。

それでは、北朝鮮が核を放棄するまで、南北対話時に核とミサイルを議題としないのか?という疑問が湧く。

これに対し9日、統一部の白泰鉉(ペク・テヒョン)報道官は「対話の議題というのは話合う中で決まる部分もあり、互いの協議によって決まるもので、今の時点で一概には言えない」という見方を示した。

なお、「朝鮮半島で戦争は認められない」という文大統領の真剣な主張は、強まる一方の北朝鮮に対する国際社会の制裁の果てがどうなるのか、米国を含む国際社会に自制と管理を求めるものと受け止められる。

原潜、FTA改定についても言及

トランプ大統領は、定番となっている米韓FTAについての注文も忘れなかった。

「韓国は米国も偉大な同盟であり同伴者であり、米国は米韓同盟のために莫大な国防予算を支出している」とした上で、「莫大な貿易赤字を是正し、公正な関係を発展させていくためには『米韓自由貿易協定(FTA)』を改定する必要がある」と語った。

これに対し文大統領は「米韓FTAは両国双方の利益にかなっている」としながら「国防部の支出を増やしていく計画であり、予算の大部分が韓国軍自身の戦略防御力を高めるために使われるが、相当部分が米国の最先端武器を購入するために使われるため、(米側の)貿易赤字解消にも貢献する」(日刊紙・中央日報8日付による)と答えたとのことだ。




また、原子力潜水艦導入(韓国語では「核潜水艦」)についても言及したという。対話の詳細を伝える同じ中央日報の記事によると、この原潜は核ミサイルを搭載した潜水艦ではなく、長時間の作戦行動が可能な原子力推進潜水艦を指す。

「北朝鮮の潜水艦を出港時から追跡し、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)発射動向を察知し、先制攻撃を行うためのもの」だとし、「核潜水艦はSLBMに対抗するもの」という青瓦台関係者の言葉を伝えている。

米韓外相会談では「敵対視しない」などの諸原則を確認

一方、ASEAN地域フォーラム(ARF)が行われているマニラでは6日、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外交部長官と米国のティラーソン国務長官による米韓外相会談が行われた。

日米韓外相会談
8月7日、日米韓三国外相会談を行った。左から、ティラーソン米国務長官、康京和韓国外交部長官、河野太郎日本外務大臣。北朝鮮の追加挑発を抑止し、非核化をけん引していくことを確認した。写真は韓国外交部提供。

会談は文在寅政権発足以降、米韓の間で交わされた合意を確認する場となった。

韓国外交部によると、米韓は「北朝鮮の核とミサイル能力に重大な進展が見られる」という認識を共にし、「強固な米韓共調と北朝鮮への戦略的抑止力の強化を基盤に、北朝鮮の追加挑発の抑制および非核化をけん引するための両者、多者を含む多角的な対応策を協議」した。

そして「北朝鮮の完全かつ検証可能で、不可逆的な非核化(Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement: CVID)を平和的な方法で達成することが、米韓両国の確固とした目標であることを再確認し、北朝鮮への制裁・圧迫の目的が北朝鮮の政権交代や崩壊になく、対話の門が依然として開いていることを確認」した。

「北朝鮮を敵対視しない」という原則は、6月30日の米韓共同声明をはじめ、これまで両国間で何度も確認されてきたものだ。

南北関係では満額回答も高まる米側の要求…米韓共同宣言を読む

また、「8月5日にASEAN外交長官会議で採択された、朝鮮半島に関する声明を高く評価する」と共に、米韓両国が今後も、ARFをはじめとする国際的な枠組みの中で「緊密に共調していくこと」を明らかにした。

なお、この「声明」とは、ASEAN10か国の外交長官が発表したものだ。全46ページにわたる内容で、2025年に向けたASEANの政治、経済上のビジョンや、周辺国との関係を整理している。

原文リンク(ASEANホームページ)
http://asean.org/joint-communique-50th-asean-foreign-ministers-meeting

その最終部分43ページ目に「北朝鮮の核・ミサイルによる挑発が拡大していることに重大な憂慮を示す」と記され、2度のICBM発射実験が触れられている。また、「朝鮮半島の恒久的な平和構築を目指す南北間の関係改善の試みを支持する」とある。

ASEAN10か国外相
8月5日、会談のために集まったASEAN10か国の外相たち。2025年のビジョンを含む共同声明を採択した。写真はASEANホームページより引用。

5日の聯合ニュースによると、声明のこの部分について韓国外交当局は「これまで朝鮮半島の問題に中立的な立場を志向してきたASEANの伝統に照らし合わせても、非常に例外的なこと」と評価しているという。

総評:米韓の思惑と韓国の思惑をしっかり区分するべき

最近、「北朝鮮は核保有国だ」という米国発の声が少なからず伝わってくる。

例えば、米国の核不拡散問題専門家のジェフリー・ルイス氏は8月3日の米「ニューヨークタイムズ」に掲載されたコラム「Let’s Face It: North Korean Nuclear Weapons Can Hit the U.S(北朝鮮の核兵器が米国を攻撃できることを受け入れよう)」の中で、60年代の中国を例に挙げ「死活を賭けた核開発を止める国はない」と指摘し、「米国は北朝鮮の核ミサイルによる攻撃に露出されている現実を認めよう」と呼びかけた。

また、聯合ニュースが伝えたところによると、7月27日には米太平洋艦隊のスコット・スウィフト司令官は豪州国立大(ANU)で行われた安保フォーラムで「(北朝鮮を核保有国として認めるのは)当然、対話の一部だ」とした。

その上で「核を保有する北朝鮮と共に暮らさなければならないということか」という聴衆の質問に対し、「人々が『すべてのものがテーブルの上に(議題として)上っている』と言う時には、核保有国としての北朝鮮との対話も含まれるものと考える」と答えている。

こうした発言がすぐに北朝鮮の「核容認論」と結びつく訳ではなく、受け止め方は人それぞれであろう。

だが筆者が指摘しておきたいのは、現時点で米韓は北朝鮮の核保有を容認する気はなく、非核化を目標に据えることを対話の条件にしているという点だ。

この前提の上に韓国は、米国や国際社会による北朝鮮への軍事力行使を強く憂慮し、これを食い止める努力を行うと同時に、北朝鮮に対し人道的な対話を呼び掛けている。

青瓦台の朴秀賢報道官は7日の電話会談を「米韓同盟の強固さを見せつけるもの」と評価した。野党を中心に高まる「コリア・パッシング」への懸念を抑えつけるための発言だが、今のところ米韓に認識のズレは存在していない。もっとも、南北対話の成果がゼロなため、ズレが出る余地すらない。

今日9日になって、米国は「予防戦争」の概念を持ち出し、北朝鮮はグアムへの「包囲攻撃」を言明するなどキナ臭い事態となっている。だが、こうした動きに惑わされず、米韓と国際社会の「原則」を常に見据えておく必要がある点は、いくら強調してもし足りないということはない。




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