28日深夜に行われた北朝鮮による2度目のICBM発射に対し、韓国は米韓連合ミサイル発射訓練や、THAAD(高高度防衛ミサイル)発射台の全機配備指示など、反射的な対応措置を講じた。一方で、青瓦台(大統領府)からは「レッドラインの臨界値」という声も出るなど、北朝鮮政策の強硬化への含みも見せた。だが、ひとまずは従来の路線を維持することが統一部の記者会見により明らかになった。(ソウル=徐台教)

「レッドラインの臨界値」も根本的な政策変化は無し

毎週月曜日の午前には統一部の定例記者会見がある。31日、統一部の白泰鉉(ペク・テヒョン)報道官は「政府の北朝鮮政策と関連し、挑発には断固として対応するという立場であり、制裁と対話を並行していくという政策基調には変化がない」と言明した。

白泰鉉(ペク・テヒョン)統一部報道官
31日、定例記者会見を行う統一部の白泰鉉(ペク・テヒョン)報道官。筆者撮影。

この日の会見では、北朝鮮のICBM発射実験を受け南北対話の実務部署である統一部が、これまでの北朝鮮政策と異なる見解を出すのかに注目が集まった。

なぜなら、28日深夜の発射直後から、韓国ではこれまでの「制裁と対話の並行」という北朝鮮政策を見直すべきという声が、野党を中心に非常に高まっているからだ。

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文在寅大統領も29日午前1時に行われた国家安全保障会議(NSC)の席で、「今回のミサイル発射は東北アジアの安保構図に根本的な変化となる可能性がある」と発言していた。

また、青瓦台の高位関係者も29日午前、報道陣に対し「現在の状況はとても厳重であり、ICBMであると判明する場合、レッドラインの臨界値に来たと言える」という見解を明かすなど、今後の政策変化を匂わせていた。

だが、やはり文大統領が「ベルリン構想の動力が失われないよう、管理する知恵が必要」と言及した通り、従来の政策を維持する模様だ。

ベルリン構想後の会談提案は未だ有効

7月17日、韓国国防部は「国防部は軍事境界線での軍事的緊張を高める一切の敵対行為を中止するための南北軍事当局会談」を7月27日に板門店で行うことを北側に提案した。

また同日、韓国赤十字社は「秋夕(中秋節、10月4日)を契機に離散家族再会行事の開催など、人道的な懸案解決のための南北赤十字会談」を8月1日にやはり板門店で行うことを提案していた。

だが、27日の軍事会談の予定は北朝鮮側の反応が無いまま過ぎ去り、明日に迫った赤十字会談についても、これまで返答がない状況が続いている。

離散家族再会
最後となった2015年10月の第20次離散家族再会で、65年ぶりに再会した夫婦。大きな話題を呼んだ。統一部ホームページより引用。

ICBMの発射実験を行った状況でこの会談の提案はまだ有効なのか、という報道陣の質問に対し白報道官は「ベルリン構想の後続措置として提案した南北軍事会談は朝鮮半島の軍事的緊張を緩和するためのもので、赤十字会談は離散家族再会などの至急の人道的事案を解決するためのもの」という原論的な回答を繰り返した。

その上で北朝鮮側に対し「挑発を中断し、対話を通じ問題を解決してこうとする韓国側の真剣な提案に呼応してくれることを願う」とメッセージを送った。

また、文大統領が指示した「韓国による独自制裁を加える方案」についての質問には、「北朝鮮の第4次(16年1月6日)、第5次(同9月9日)核実験以降、韓国の独自制裁が実施されている」とし、「まだ決定したことはない」と明かした。

統一部に苦心の色

統一部は南北対話、南北関係改善の実務を司る部署であるため、現在のような南北断絶局面で、動ける範囲はほとんどない。青瓦台、外交部、国防部などが主役にならざるを得ず、記者会見でも苦しい立場が見て取れた。

北朝鮮の反応が無い以上、韓国としては圧迫を強めつつ北側の態度の変化を待つ他にない。しかし現実には圧迫が強まる一方になり、対話は実現しないというジレンマが付いて回る。乗り越えるべき前政権の南北関係と大差が無くなり、八方ふさがりになり兼ねない。

韓国側の動きとして今後、考えられるのは特使の派遣だ。昨年9月の第5次核実験の際、当時の朴槿恵大統領に対し、第一野党の共に民主党が提案したことがある。いずれにせよ、できる範囲で独自の働きかけを増やしていくしかない。




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