対話を提案する韓国政府をあざ笑うかのように行われた北朝鮮による2度目のICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は続けざまに強い対抗措置を講じるとしたが、野党の間では北朝鮮政策の転換を含め、政府への批判の声が高まっている。各党の反応をまとめた。(ソウル=徐台教)

文大統領「安保には与野党が存在しない」

発射実験直後の29日午前1時に開催された、国家安全保障会議(NSC)で、文大統領は「このように厳重な安全保障の危機状況では国民の団結が最も必要だ。与野党すべてが協力して国民が不安にならないよう。経済的な波及がないように積極的に努力して欲しい」と述べた。

与野党の立場は、北朝鮮への反応と文在寅政府への反応に大きく分かれる。全体的に北朝鮮を強く非難しつつ、政府に現実的な北朝鮮政策の調整、転換を促す声が高かった。

共に民主党「文大統領の指示は妥当、与野党は超党的に力を合わせるべき」

与党の共に民主党は、文大統領の対応を評価し、青瓦台との方針との一貫性を保とうとする姿勢だ。ICBM発射から一晩明けた29日午前に白惠蓮(ペク・ヘリョン)報道官が書面で党の立場を発表した。

その中で「北朝鮮の深夜のミサイル挑発は、どのような名分も無い無謀さそのもので、北朝鮮はその代価を必ず支払わなければならない」と北朝鮮を非難した。

サインする金正恩朝鮮労働党委員長
27日、2度目のICBM発射実験にサインする金正恩朝鮮労働党委員長。写真は北朝鮮の朝鮮中央通信より引用。

また、「文在寅大統領による、残るTHAAD発射台の追加配備と米韓間での戦略的抑止力強化方案の協議、国連安全保障理事会の招集要請などを通じた強力な北朝鮮制裁案を作ろうとする指示は、とても妥当で、時宜にかなっている措置だ」と評価した。

同日午後には姜勳植(カン・フンシク)院内報道官も書面を発表した。やはり文大統領の指示を評価しながらも、「THAADの臨時配置を決定したことは、北朝鮮の挑発による東北アジアの危機状況と米韓同盟を十分に考慮した措置」と持ち上げた。

そして、「現在は与野党が超党的に力を合わせる時だ」とし、「政府と青瓦台の対応に対し不必要な葛藤をもたらすのではなく、政府が力を込めて対応できるよう、国民の力を知恵を集める時」と主張した。




自由韓国党「北朝鮮制裁へと基調を変更せよ」

続いて、第一野党・自由韓国党の反応だが、同党は文在寅政権の発足以降、対決姿勢を取り続けてきた。内閣の人事案や追加予算案への反対はもちろん、7月14日に青瓦台(大統領府)で行われた文大統領と与野党党首の会合にも参加しなかった。

29日、全希卿(チョン・ヒギョン)報道官は論評の中で「北朝鮮の度重なる武力挑発を協力に糾弾する」と述べ、「これ以上国際社会を気にせずに、核とミサイルで体制の延命を図っていくという意志を強く表明したもの」と、今回のミサイル実験を位置付けた。

自由韓国党の洪準杓(ホン・ジュンピョ、右)代表と、鄭宇澤(チョン・ウテク)院内代表
自由韓国党の洪準杓(ホン・ジュンピョ、右)代表と、鄭宇澤(チョン・ウテク)院内代表。文政権への批判を強めている。写真は自由韓国党HPより引用。

また、韓国政府に対しても批判を強めた。既報の通り、文大統領は未配備だったTHAAD(高高度防衛ミサイル)発射台4基の臨時配備を指示したが、これに対し「(ミサイル実験前の)28日には、環境影響評価を行うとし、年内のTHAAD配備を事実上無いものとしていた」と政府の朝令暮改を批判した。

さらに「北朝鮮に対しても依然として一方的な求愛に近い対話の提議を続けている」とし、「国際社会の強力な制裁と合わない一方的な路線を選んだ韓国政府が、どれだけ強い意思で北朝鮮の挑発に対応できるか心配」だとした。

その上で「文在寅政府の安保体制の再整備を求める」と結んだ。

28日のICBM発射実験を視察する金正恩朝鮮労働党委員長。
28日のICBM発射実験を視察する金正恩朝鮮労働党委員長。笑顔がこぼれる。写真は朝鮮中央通信から。

なお、ミサイル発射に先立つ28日の論評では、米国で上下院を通過した「北朝鮮遮断および制裁現代化法」と「北朝鮮旅行統制法」を取り上げ、「米国はどの時よりも断固で強力な措置が必要だと見ている」と述べていた。

さらに「韓国政府は制裁に消極的で、体育交流で南北関係をこじ開けようとする文政府の『求愛』を北朝鮮はあざ笑っているかのようだ」とし「文在寅政府は一日も早く北朝鮮の片思いをやめ、韓国が強力な北朝鮮制裁を導く国家になるよう基調を変えなければならない」と主張していた。

国民の党「アマチュア外交をやめ現実を直視せよ」

国民の党は、北朝鮮のICBM発射実験後、与野党最大となる5つの論評を発表した。

孫今柱(ソン・グムジュ)主席報道官は29日、発射実験について「しつこいと言わざる得ないほどだ」との見方を示し、「離散家族再会の提案、平昌オリンピック参加提議など、わが政府の対話要請に無視を超えて冷や水を浴びせた」と評価した。また、「米国の北朝鮮制裁案通過に対する反発の意味もあるだろう」と分析した。

一方、韓国政府に対しては「朝鮮半島の平和のためには、請求な対話と成果に執着するのではなく、ち密な戦略と速度調節、そして強固な安保が必要であると言う点に留意すべきだ」と助言した。

自由韓国党と同様に、THAAD臨時配備についての批判もあった。韓国政府がTHAADの臨時配備は行うが、環境影響評価は計画通り行うと発表したことに対し、米中間での「綱渡り外交」と指摘した。

文在寅大統領とトランプ大統領握手
6月30日(現地時間)、共同記者会見を終えて握手する文在寅大統領とトランプ大統領。写真は青瓦台提供。

「就任以降、THAAD配備、南北関係の設定において、米国とはずっとズレがあったし、中国に対しては不必要な期待を持たせるアマチュア的な外交を展開したきた」というのだ。

外交への不満は続く。さらに「米国に40兆ウォン(約4兆円)の要旨を約束して得たものは何か。米韓FTA(自由貿易協定)でも北朝鮮との関係改善も、THAAD配置も、思い通りになったものはない」と痛烈に非難した。

その上で「これからでも専門家と共に、我々に利益をもたらす戦略的な外交の方向を定める」ことを要求した。

同党はまた「南北関係における変化した現実」を直視するよう、強く主張した。

「南北対話や南北軍事会談の提案、北朝鮮の非核化問題も我々の一方的な宣言に過ぎず、北朝鮮は沈黙している。帰って来るのはミサイルの挑発」だとし、「現実を度外視し『(朝鮮半島問題の)運転席を確保した』と叫ぶことが空虚であることを肝に銘じるよう」求めた。

5月10日の文在寅政権発足以降、北朝鮮のミサイル発射実験は今回を含め7度目となる。




正しい政党「『画期的な』北朝鮮政策の転換をするべき」

「新しい保守」を目指す正しい政党も、矢継ぎ早に論評を発表した。

29日、イ・ジョンチョル報道官は論評を発表し、北朝鮮が夜中にミサイル発射実験を行った点について「監視を避けていつでもミサイルを発射できることを見せつけるため」と診断した。

同時に、「北朝鮮は結局、ただひたすらにミサイルを高度化するため、一貫した道を歩んでいく意思を披露した」と評価した。

また、国民の党よりも一歩踏み込み、北朝鮮政策における画期的な転換を要求した。

チョン・ジミョン報道官名義で発表された29日の論評で、北朝鮮メディアが韓国のTHAAD発射台4基の臨時配備を非難したことについて「厚顔無恥極まりない。一抹の民族的な良心があるならばまず、ミサイル挑発に釣り合う謝罪からするべきだ」と批判した。

ICBM発射実験の様子
北朝鮮メディアが公開した今回のICBM発射実験の様子。写真は「わが民族同士」から。

それと共に「今回のICBM発射が米国と直談判するための戦略的な武力示威である」とし、「米朝対話が実現するまで挑発の水位を高めていくだろう」と見立てた。

さらに「北朝鮮のこのような逆張り手法は昨日今日始まったことではなく、1994年ジュネーブ合意以降、23年間拙劣な手法で繰り返されてきた」と述べた。そして「一触即発の厳重なこの事態に陥るまで、歴代政府の安易な北朝鮮政策があった」と批判した。

その上で文在寅政府に対し、「今日の重大な安保危機は現在の北朝鮮政策では解決できないことを認識、『画期的な』北朝鮮政策の転換をするべき」と強く求めた。

正義党「平和的な解決方案を模索するべき」

正義党は比較的静かに記者会見を一度開くにとどまった。チュ・ヘソン主席報道官は29日、「全世界の憂慮と批判には関わらず、無謀な挑発行為を行った北朝鮮の愚かさを嘆き、強く糾弾する」と述べた。

また、韓国側が対話を提案していたことと関連し「北朝鮮に、平和と共存を成し遂げる意志があるのか疑問」とし「今後起こり得る国際社会からの協力な措置は、みな北朝鮮みずからが招いたものである点を確認しておく」と突き放した。

一方、文在寅大統領のTHAAD配備指示については疑問を呈した。「THAADの実効性は明確に立証されていない」とし、「配備についての国民世論は依然として葛藤している点からも、慎重なアプローチがいる」と述べた。

そして「何よりも大切なものは、北朝鮮の挑発行為が極端な状況に行きつくのを防ぐこと」と語った上で「危機の安保状況の中で、政府と国会、国際社会が平和的な解決方案を模索するのにより努力をしていくべき」と助言を送った。

ICBM発射実験の成功を喜ぶ平壌市民。
29日、ICBM発射実験の成功を喜ぶ平壌市民。写真は朝鮮中央通信より引用。

朴前大統領は昨年「安保は与野党が共に議論できない」と

前任の朴槿恵大統領は、昨年9月9日に北朝鮮が5度目の核実験を行った後の9月12日に、与野党三党の代表と会合を持ったことがある。

この席で野党・共に民主党の秋美愛(チュ・ミエ)代表と、国民の党の朴智元(パク・チウォン)非常対策委員長は、安全保障問題を議論するための与野党間の協議体と、北朝鮮へ特使を派遣し対話のテーブルにつかせることが必要だと提案した。

だが、朴前大統領は「安全保障は与野党が共に議論できる性質のものではない。大統領が責任を持って導いていくものだ。大統領が与野党に協力を求める立場だ。安保に関する与野党の協議体は難しい」と述べ、この訴えをその場で退けた。

文大統領は批判の声を高める野党に対し、どのような姿勢を取るのか。ここは丁寧な対応が求められるところだろう。朴前大統領との「違い」に注目したい。




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