19日、文在寅政権が「国政課題報告大会」を開き、任期5年間の国政運営計画を発表した。計画では国政の5大目標を掲げ、その実現のための100の国政課題が詳細に説明された。注目の南北関係も5大目標の一つに含まれ、具体的なロードマップが示された。内容を上下に分けてまとめる。(ソウル=徐台教)

国政企画諮問委員会2か月間の成果

19日午後、青瓦台で発表された計画の正式名称は「文在寅政府、国政運営5か年計画」。作成したのは「国政企画諮問委員会」だ。

国政課題報告大会の文在寅大統領
19日、5か年計画を発表する「国政課題報告大会」に臨む文在寅大統領(中央)。大会はテレビで生中継された。大統領の向かって左隣は李洛淵(イ・ナギョン国務総理)、右隣は「国政企画諮問委員会」委員長を務めた金振杓(キム・ジンピョ)議員。写真は青瓦台提供。

朴槿恵前大統領の弾劾により早期選挙となったため、文在寅政権は通常なら大統領当選直後に設置され、人事や国政課題といった重要事を決める「大統領引き継ぎ委員会」が無いまま発足していた。

この政権移管における「非常事態」を補うために設置された同会は経済、政治、社会、外交安保など6つの分科に分かれ、各分野に明るい学者・議員などが参加し、5月16日から7月15日まで運営された。

「85個の政府機関から290余回にわたる業務計画と計画についての報告を受け、公式的に8回の全体会議と、210余回の文科別会議、20余回の文科間会議を開催」(同計画書)した結果が、今回の計画書となる。

計画書は冒頭で言及した通り「5大国政目標」とそれを実現するための「100大国政課題」、そしてこれとは別途の「新政府ならでの国政ビジョン」(同)である「4大複合・革新課題」の順で整理されている。また、それに伴う財源確保や、計画管理の方案なども含まれている。

「国政運営における最上位の計画」と位置づけられる今回の報告書だが、実は前政権でも似たようなものが発表されている。2013年2月の「朴槿恵政府国政課題」がそれで、こちらは「大統領引継委員会」が提案したものだ。

文在寅政権と同様に5つの国政目標が設定されているが、細部の国政課題は140と40個が多かった。5つの国政目標を比べてみよう。

朴槿恵文在寅国政課題比較
文字だけで判断する場合、朴槿恵政権では「管理」が強調されるイメージを受ける反面、文在寅政権は伸びやかなイメージを受ける。弊社作成。

190ページあまりの報告書はウェブで全文が公開されている。ダウンロードが可能な青瓦台(韓国大統領府)のページはこちら。
http://www1.president.go.kr/news/newsList4.php?srh%5Bview_mode%5D=detail&srh%5Bseq%5D=822

国政の基調を理解することが大切な理由

本紙はこれまで、文在寅政権発足後の南北関係を追ってきた。短く過去2か月間を振り返ってみると文大統領はまず、就任直後から南北交流の再開を打ち出し、民間の南北接触を続けざまに許可する対話姿勢を明確にした。これに対し、北朝鮮側は度重なるミサイル実験と接触の拒否で答えてきた。

6月末に舞台は外交に移る。米韓首脳会議、ドイツのG20(先進20か国)サミットとで文大統領は立て続けに「圧迫と関与」を中心とする北朝鮮政策を発表した。「北朝鮮を敵対視しない」と明言そしつつ、制裁と対話を並行させる政策基調は西側諸国からの支持を得て「朝鮮半島問題解決における主導権」を認めてもらうことに成功した。

「韓国には朝鮮半島問題を解決する力がない、外交力を高める必要を実感」文在寅大統領が外交行脚を総括

さらに勢いに乗り、今月17日には北朝鮮へと公式的に対話を提案した。軍事境界線での敵対行為を相互に止めるための南北軍事当局会談と、離散家族再会のための赤十字会談がされだが、24日現在まで北側の反応はなく会談が流れる公算が高い。

このように北側の反応が薄いとはいえ、南北関係における韓国側の積極的な姿勢からは、政権初期に南北関係改善への意気込みを韓国国内と国際社会に向け意図的にアピールしたい意図が透けて見える。

だが現在は、就任初期の「顔見せ」も終わり、今後を見通し腰の据わった対応が求められる地点に差し掛かっている。そのタイミングで発表された今回の「国政運営5か年計画」は、今後の韓国国内政治はもちろん、南北関係を読み解く上で一つの指標となる。

文在寅政府が何を目指しているのかを正確に読み取る必要がある。そしてその際、国内政治と南北関係を切り離して考えずに、全体の脈絡とバランスを見ていく必要があると筆者は見る。

韓国国会議席一覧
現在の国会の議席一覧。与党・共に民主党の劣勢が一目瞭然だ。なお、定数300にも関わらず合計が299議席となっている理由は、現役議員である国会議長がカウントされていないため。弊社作成。

ヒントは「世論」にある。文政権は周知のように「与小野大」だ。与党・民主党は国会で過半数(150議席)に満たないわずか120議席を占めるにとどまり、単独ではいかなる方案も通すことができない。必然的に、野党4党に協力を仰ぐことになるが、この事情を知り尽くす野党も易々と首を縦に振らない状況が、この2か月間繰り返されてきた。

その時に政権の頼りどころとなってきたのが、国民からの支持率であった。ゆるやかに下降しているとはいえ、就任後2か月以上経っても未だに70%超を維持する国民の強い支持が、野党へのけん制となり、文大統領の笑顔を守っている。

文在寅大統領支持率グラフ
世論調査会社「REALMETER」社の定例調査推移。就任直後の5月第3週から7月第3週まで。支持はじりじりと下がり、不支持も上昇している。現在は72.4%。REALMETER社HPより引用。
文在寅大統領支持率調査
こちらは「韓国ギャラップ」社の定例世論調査結果の推移。6月1週目から7月3週目までだ。やはり下降曲線を描いているが、依然として70%越えの高い値を維持している。

文政権はこの勢いを今後も維持する必要がある。国民世論の風向きが重要であるほど、国民に対し政策を丁寧に説明することが求められるのは当然のことだ。その上で国内外の政策ビジョンに一貫性があればなお良いだろう。計画書を大まかに見ていきたい。

計画書に現れる文在寅政権の改革意思

計画書の冒頭ではまず、政府が抱く「危機感」が前面に出ている。「国内外の厳重な環境」という認識がそれだ。

国内的には「倒れた国家・社会の体系を正義的に整え、雇用と未来の成長動力を創出し、不平等と差別を解消し、分権と均衡発展を実現させる」とする。

次いで対外的には「堂々とした協力外交体制を強化し、強い安保の力量と米韓同盟など国際協力を通じ、朝鮮半島の非核化と繁栄を実現させる」としている。

文在寅大統領笑顔
やはり19日の「国政課題発表大会」の様子。文在寅大統領(中央)の明るい姿が目立った。発表は異例のプレゼンテーション形式で行われ話題を集めた。写真は青瓦台提供。

この現状認識を改善することが文政権の政治目標「国らしい国」となる。計画書ではさらに、「国政運営5か年計画の必要性」を細かく解く。

この計画は「文在寅政府の国政運営の羅針盤、設計図」であり、「新しい韓国建設の方向を設定し、ぶれずに推進していくための指針」であるという。また「限定された国家資源を効率的に配置し運営するための地図」でもあり、「国政運営の連続性を確保」するものという位置づけだ。

計画を定めるメリットも挙げている。

まず「国政運営の正当性と効果を高め」、「国家全体の運営の予測可能性を増大させる」という。同時に「政府と国民の間の意思疎通の基盤を拡大」する役割も果たす。

また、「方向転換が必要な場合、変化の方向と水準を決定し、評価基準の転換を手伝う指南書の役割」も担うとしている。

ろうそくデモ写真
昨年12月から20週連続で行われ、朴槿恵大統領弾劾の原動力となった「ろうそくデモ」の様子。昨年12月5日、筆者撮影。

極め付けはことさら強調されている以下の部分だ。5か年計画は、「ろうそく市民革命で誕生した文在寅政府が、過去の悪弊を一掃し、台頭する懸案に対応し、未来のための課題をより民主的・合理的・効率的に遂行するために必須」というのだ。文在寅政府のキーワードが勢ぞろいしている一節といえる。

どこまで実現するか 5か年計画の詳細

5か年計画の核心部分をまとめた表だ。冒頭で一度言及した通り、国家ビジョンの下に5大国政目標が、そしてそれを実現するための20の戦略と100の課題が掲げられている。

5か年計画の一覧
5か年計画の一覧を表にまとめた。報告書に含まれていた表を翻訳し、再整理した。弊社作成

一つ一つについて見るには膨大な量なので、ここでは5つの国政目標が何を目指すのかを、計画書を元にまとめる。

(1)国民が主人の政府
政府には、国民主権のろうそく民主主義を定着させ、権力のろう断と不正腐敗の無い韓国、新しい民主共和国の基盤を作る義務がある。また、過去の歴史の真相を究明し、実現されていない社会正義を正し、未来志向の社会統合の基盤を作る。表現の自由の保障と言論(メディア)の独立性と公正性を高める。

民主主義国家の主人は国民であり、大統領をはじめとする公職者は国家の運営のために国民から権力を一時的に委任されただけだ。このため、国民との円滑で透明な疎通は公職者の当然の義務。韓国の新しい未来を設計するために、国民主権時代と地域分権を志向する改憲を推進し、民主主義をより発展させる方向で選挙制度の改革など、政治発展のために努力。

(2)共に良く暮らす経済
韓国経済が直面する低成長、雇用不足、社会経済的不平等を解決するためには、大企業と中小企業、雇用主と労働者皆が共に成長する戦略が必要。このために雇用を増やし、労働時間と非正規雇用を減らし、雇用の質を高める。

さらにソフトウェア開発、融合教育などを通じ 第4次産業革命をリードするための人材を育成し、科学技術を発展させる。経済成長のパラダイムを大企業中心から中小ベンチャー企業中心へと転換するために支援する。




(3)私の生活に責任を負う国家
皆が競争する市場経済には勝者と敗者がおり、不平等が起こるしかない構造だ。その中で、社会・経済的な平等性を増進し、人間としての尊厳を維持し、社会構成員のつながりを強め、国民の統合を推進。包容的、積極的な福祉国家へと進む。

韓国という共同体の消滅を避けるため、人口を増やすためのあらゆる手段を講じ、育児を国が責任をもって行う。保育と教育における国家の責務を強化。同時に、統合的な国家災難管理体系を構築し、国民の安全と生命を守る。原発規制体系の革新と、脱原発を推進。

(4)均等に発展する地方
個人の生活の根拠地である地域(地方)が十分な権限を持つとき、草の根民主主義が成熟する。そして国家の民主主義を強くする。首都圏へと資源が集中し、地方都市の主力産業が倒れるという衰退を食い止める。

高齢化が進む農村、漁村に若者が戻り、地域社会に活気を吹き込めるような交通・医療・住居などの環境を整える。

(5)平和と繁栄の朝鮮半島
冷厳な国際社会においては、自身を保護する最終的な責任は自身にある。自身を守れる「責任国防」体制を構築することが絶体絶命の課題。北朝鮮の脅威への対応能力を高めるとともに、韓国の安保体系の中長期的な体質改善までを行う。強固な米韓同盟下で戦時作戦統制権の早期転換を実現する。

北朝鮮を対話に導き、北朝鮮の非核化と平和体制の構築を包括的に推進。南北関係を法制化し、南北関係を新たに定立させ「朝鮮半島新経済地図」構想を推進。北朝鮮政策に対する超党的な協力と国民的な支持を強化し、統一へのコンセンサス(同意)を拡散。また、東北アジアを中心に積極的な平和協力外交を展開。

5か年を三期に分け推進 問題は予算

計画書では任期5年を革新期(17年5月~18年)、跳躍期(19年~20年)、安定期(21年~22年5月)の三機に分けて、5か年計画を進めるとしている

革新期では、積弊の清算、権力機関の改革、経済民主化、改憲、政治改革なそ重点課題を扱うとする。跳躍期では、各課題別に、政策の成果を実感できる時期とし、国民の支持の継続的な確保を狙う。安定期では課題を完遂し、国民の支持を元に持続可能な政治・経済・社会の革新体制を構築するとする。

だが、問題は予算だ。計画書によると5つの国政課題を達成するためには178兆ウォン(約17兆8000億円)が必要とされる。政府はこれを税収の拡大(82.6兆ウォン、約46%)と支出の削減(95.4兆ウォン、約54%)で賄うとするが、この財政計画は「非現実的」という専門家の声が左右から上がっている。

文在寅と秋美愛
20日、21日にかけて開催された「国家財政戦略会議」の様子。この場で「増税」が初めて公然と語られた。文大統領(中央)の右が秋美愛(チュ・ミエ)共に民主党代表。写真は青瓦台提供。

19日の5か年計画の発表後、20日、21日にかけて国家財政戦略会議が開かれた。その席で与党・共に民主党の秋美愛(チュ・ミエ)代表は「課税標準2000億ウォンを超える大企業の法人税率を22%から25%に、同じく課税標準5億ウォンを超える個人の所得税率を40%から42%に上げる」増税案を提案した。

実現すれば毎年約4兆ウォンの増税となるこの案を政府も積極的に採用しようとしているが、野党の反応は悪く、来月予定される国会で法案が通過するかは未知数だ。増税は支持率に大きな影響を与えることもあり、「スーパーリッチ」を対象にするにとどめたが、増税案が世論におよぼす影響を今後、見極める必要がある。

(下)では朝鮮半島情勢と関連する国政課題を点検する。




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