文在寅(ムン・ジェイン)政府の北朝鮮政策を診断する分析第二弾は、ソウル大学・統一平和研究院の徐輔赫(ソ・ボヒョク)研究教授の寄稿文を掲載します。翻訳は本紙、徐台教。

徐輔赫(ソ・ボヒョク)ソウル大学平和統一研究院研究教授

筆者紹介:徐輔赫(ソ・ボヒョク)
北朝鮮専門家。1966年生まれ。北朝鮮研究に定評のあるソウル大・平和統一研究院研究教授。成均館大学新聞放送学科卒業後、韓国外語大学で国際関係学博士。過去に国家人権委員会で北朝鮮人権問題を担当し専門委員も務めるなど、北朝鮮人権問題そして北朝鮮と国際社会の関係に明るい。著書に「北朝鮮人権」(2007)、「ヘルシンキ・プロセスと東北アジア安保協力」(2012、共著)など多数。

文在寅政府の北朝鮮政策の方向と展望 徐輔赫教授(ソウル大学統一平和研究院)

文在寅政府による北朝鮮政策の方向が具体化してきたが、北朝鮮と周辺国の反応は、まだ期待以下だ。

去る7月初頭に初めて会った文在寅、トランプ大統領は朝鮮半島問題における同意を導き出した。共同声明で両首脳は「朝鮮半島の非核化という共通の目標を平和的な方式で達成」するために協力するとし、「韓国と米国が北朝鮮に対する敵対視政策を持っていない」と確認、「トランプ大統領が朝鮮半島の平和統一環境を作る上で、韓国の主導的な役割を支持」した。

反面、両首脳は、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に向き合い、拡大抑止力を含む同盟を再確認すると同時に、北朝鮮を対話の場に引っ張り出すための手段として制裁を拡大することに合意した。

しかしこの部分は、現在の対決局面を転換する際に障害をもたらす可能性がある。首脳会談の共同宣言発表の直後、北朝鮮側が出した初めての反応は否定的だった。また同じ頃、筆者が第三国で会った北朝鮮人士は、「対話と圧迫を並行しながらどうやって北南関係を発展させていくのか疑問だ」と吐露した。

文在寅大統領は続く7月6日に北朝鮮にある提案を行った。韓国政府が「新朝鮮半島平和構想」と呼ぶこの発表は、統一よりも平和を優先しているが、非核化と平和共存・協力を強調している。非核化と関連し、文大統領は「朝鮮半島の非核化のための決断だけが北朝鮮に安全を保障する道」と強調した。

これは北朝鮮が、核開発だけが体制の安定を保障する道であり、その点から非核化交渉はあり得ないとする最近の立場とは対置されるものだ。

そうした点を反映し、文大統領は「北朝鮮の核の完全な廃棄と平和体制の構築、北朝鮮の安保・経済的な憂慮の解消、米朝関係および日朝関係の改善など、朝鮮半島と東北アジアの懸案を包括的に解決していく」と付け加えた。

文大統領は北朝鮮を吸収統一する意思がないことを明らかにし「平和な朝鮮半島」実現のための様々な政治的・非政治的交流協力事業を提案し、北朝鮮の呼応を促した。




韓国政府は7月17日、文大統領の「新朝鮮半島平和構想」を具体化する後続措置として、離散家族再会のための南北赤十字会談と、軍事境界線上での敵対行為中止のための南北軍事当局会談を北朝鮮に提案した。二つの事案は、文大統領のベルリン宣言に含まれた事項として、北朝鮮の平昌オリンピック参加を含んだ優先的な推進事項として提示されたものだ。

北朝鮮は文在寅政府の北朝鮮政策の提案に対し、まずは否定的な反応を見せた。米韓首脳会談に対し、北朝鮮の官営「労働新聞」は7月2日、個人署名の論評を通じ「親米事大の旧態に溺れ、対米屈従の鎖にがんじがらめになっている奴らの、弱々しい様をあからさまに晒している」と非難した。

韓国国防部と赤十字社が北朝鮮側に会談を正式提案 「新ベルリン宣言」を実行に

しかし北朝鮮が韓国との対話の門を完全に閉じたと見るのは難しい。上記の論評が文在寅大統領を名指ししていない点がその根拠だ。また、論評が「南朝鮮当局が真に北南関係改善に関心があるならば、時代錯誤的な対米追従政策から抜け出さなければならない」と要求した点は、南北対話を展望し、文政府を圧迫する交渉戦術と読むこともできる。

それにも関わらず、北朝鮮は文在寅政府の登場と前後し、ミサイルの試験発射を続けてきた。北朝鮮は文在寅政府の発足以降、6度に及ぶミサイル発射実験を行っている。特に、北朝鮮は7月4日に断行した「火星-14」の発射実験に成功したと主張し「米国の対朝鮮敵対視政策と、核脅威が根源的に清算されない限り、北朝鮮はいかなる場合にも核と弾道ロケットを交渉テーブルに挙げない」と明かした。

これは、核問題が南北間ではなく、北朝鮮と米国間の問題であるという北朝鮮の基本的な立場によるものだ。核関連の交渉を韓国と行う考えが無いとうことだ。また、米国の北朝鮮制裁に韓国が共調する場合、北朝鮮は南北関係の改善に乗り出す意向が無いという意味も含んでいる。

高まった核武装力を利用し、北朝鮮は攻勢的な対外・対南政策を展開するだろう。そうした点を反映し、文在寅政府は段階的で包括的なアプローチを北朝鮮に対し提案した。

文大統領の北朝鮮に対する包括的提案は、圧迫政策を展開してきた前任の韓国政府と現在の米国・日本政府と異なる。

7月17日、韓国政府の赤十字会談、軍当局者会談の提案に対し、米国と日本は否定的な立場を表明し、中国は歓迎の意思を見せた。事実、脱冷戦後の北朝鮮政策において、米韓が共調したのは1998年-92年、1998年-2000年だけだ。文在寅政府は当時よりも、さらに強くなった北朝鮮、さらに大変な米国を相手に「平和な朝鮮半島」を作らなければならない立場だ。




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