文在寅大統領がドイツ・ベルリンで演説した北朝鮮政策「新ベルリン宣言」に従い、国防部は軍事境界線での敵対行為中止を、赤十字社は離散家族の再会をそれぞれ議論するため、北朝鮮側に板門店での会談を正式に呼び掛けた。(ソウル=徐台教)

「10.4に離散家族再会、7.27に軍事境界線での敵対行為中断を」文大統領が演説で金正恩氏に呼びかけ

国防部は7月21日に南北軍事当局会談を提案

7月17日午前9時、同時刻に国防部と赤十字社で記者会見が行われた。

まず、国防部では西姝碩(ソ・ジュソク)次官が「7月6日、わが政府は休戦協定64周年となる7月27日を期して、南北が軍事境界線で軍事的緊張を緩和していくことを提案した」と切り出した。

西姝碩(ソ・ジュソク)韓国国防部次官
7月17日、南北軍事当局会談を呼び掛ける韓国の西姝碩(ソ・ジュソク)国防部次官。写真は国防部より。

続けて「これに対する後続措置として、国防部は軍事境界線での軍事的緊張を高める一切の敵対行為を中止するための南北軍事当局会談を提議する」とした。

会談の日時は7月21日。38度線をまたぐ板門店(共同警備区域・JSA)の北側地域にある「統一閣」で開催するとした。

北側に対し、「現在断絶している西海(黄海)地区の軍通信線を復元し、わが方の提案への立場を返信してくれることを願う。肯定的な反応を期待する」と呼びかけた。

敵対行為の範囲はあいまい 現在稼働する通信線は「ゼロ」

西次官の発表後、記者団からいくつかの質問が飛んだ。まず「『敵対行為』をどう定義するのか」という質問に対し、西次官は「現段階では特定せずに北朝鮮の反応を見ながら検討する」としながらも、「軍事境界線での敵対行為の相互中断を包括的に協議することになる」とあいまいに答えるにとどまった。

また「南北間の会談チャンネルは稼働しているのか」という質問には、「先ほど言った通り」と、西海(黄海)の軍通信線の回復を北側に希望する見方を繰り返した。

従来、韓国には西海、板門店、東海(日本海)の三か所で北朝鮮と通信・通話を行っていた。しかし、現在はいずれも稼働しておらず、韓国政府としては北側も負担の少ない西海の通信線再開を呼び掛けたかたちだ。

最後に「会談はどの『級』で行われるのか」という質問に対して西次官は「協議を通じ決める」とした。

なお、南北軍事当局間で最後に会談が行われたのは2014年10月。韓国からはリュ・ジェスン国防政策室長(中将、当時)が、北朝鮮からはキム・ヨンチョル偵察総局長(大将、当時)が参加し、北朝鮮へチラシ散布の停止や相互誹謗・中傷の禁止などが議論されたが合意には至らなかった。




赤十字社は8月1日に南北赤十字会談を提案

韓国赤十字社では、金仙香(キム・ソンヒャン)会長代行が記者会見を行った。国防部と同様に会見内容は短かった。

まず、「韓国政府は『ベルリン構想』を通じ、歴史的な10.4首脳宣言10周と、わが民族の大きな祝日である『秋夕』が重なる今年10月4日に、離散家族再会行事と墓参訪問を進めることを提案した」と、やはり文大統領の「新ベルリン宣言」に沿ったものであることを明確にした。

7月17日に南北赤十字会談を持ちかける、韓国赤十字社の金仙香(キム・ソンヒャン)会長代行。写真は同社ホーム―ページより。

秋夕(チュソク)とは、旧暦8月15日の「中秋節」のこと。韓国では前後が連休となり、お墓参りや帰郷が行われる。家族のつながりが一年で最も強く想起される日だ。

金会長代行はさらに、「現在、韓国には多くの離散家族が家族との再会を待ちわびており、北側でも事情は同様だと思う。この方たちが生きている間に家族と会えるようにすることは、いかなる政治的な考慮よりも優先されなければならない」と、離散家族再会が差し迫った人道的な問題であることを強調した。

続けて「韓国赤十字社は秋夕を契機に離散家族再会行事の開催など、人道的な懸案解決のために、南北赤十字会談を8月1日に、板門店(共同警備区域・JSA)の南側地域にある『平和の家』で開催するとを提議する」とした。南北軍事会談は板門店の北側で、南北赤十字会談は南側で行うことになる。

離散家族再会
最後となった2015年10月の第20次離散家族再会で、65年ぶりに再会した夫婦。大きな話題を呼んだ。統一部ホームページより引用。

会談に臨む人選も明らかにした。韓国側からは、金建中(キム・ゴンジュン)事務局長を首席代表とし、3人の代表が参加するとした。そして、「板門店にある南北赤十字連絡事務所を通じ返信を望む」と共に「朝鮮赤十字会側の肯定的な反応を期待する」と結んだ。

最後に離散家族再会が行われたのは、2015年10月。当時、韓国側から643人、北朝鮮からは329人が参加し、再会を喜び合った。

北側の反応は未知数も軍事会談優先か

韓国の提案から一晩明けた18日現在、北朝鮮側はまだ反応を見せていない。焦点は、北側が「どこまで受け入れるのか」という部分だ。

この日、「軍事境界線での敵対行為」が何を指すのかは語られなかったが、南北双方で大型スピーカーを通じ行っている「体制宣伝」を停止するという見方が一般的だ。

韓国側のスピーカーの性能が北側のものより高く、韓国の歌謡曲なども北側に向けて流しているとされ、前線兵士への影響は小さくないと言われている。北側としては受け入れても損ではない。

一方、離散家族再会へのハードルは高い。北朝鮮は「離散家族再会のためには北朝鮮レストランから拉致した12人と、脱北者キム・リョヌ氏の北朝鮮への帰国を認めるよう」事あるごとに繰り返してきた。

だが、韓国側としては到底受け入れられる条件ではないため、どこまで双方が歩み寄れるかがポイントとなる。

韓国メディアでは、北側が軍事会談を受け入れ、赤十字会談については時間的な余裕も多少あることから、先延ばしにするという見方も出ている。




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