本記事は、7月12日の韓国の日刊紙・中央日報紙面に[시론] 제재와 대화 병행론의 함정([時論]制裁と対話並行論の落とし穴)として掲載された金根植教授による寄稿文を、JTBC社と著者の承諾の下で翻訳・転載したものです。翻訳の責任は弊社(翻訳=徐台教)にあります。

金根植・慶南大政治外交学科教授著者紹介:金根植(キム・グンシク)
北朝鮮専門家。1965年全羅北道全州生まれ。慶南大政治外交学科教授。ソウル大学を卒業し、1999年に同大学で政治学博士号を取得。盧武鉉政権当時、青瓦台(大統領府)の安全保障室諮問委員、北朝鮮研究の有力シンクタンクの一つである同大の「極東問題研究所」の研究室長、統一部の南北関係発展委員などを歴任。2007年の南北首脳会談にも特別随行員として参加し平壌を訪れた。

[外部寄稿] 制裁と対話並行論の落とし穴

文在寅大統領の4強外交が一段落した。韓米首脳会談により朝鮮半島問題の運転席を占めることはできたが、金正恩の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射で、文大統領の運転はエンジンをかけることすら難しくなった。新ベルリン宣言により南北対話の意志を表明したが、韓米日首脳会談の北朝鮮に対する最大の圧迫という共同声明で、北朝鮮の呼応を期待するのは難しい望みとなった。韓中、韓日、韓露首脳会談は、懸案の解決は無く、写真撮影用の会合という性格が強かった。逆に北朝鮮の核問題に関する、韓米日と朝中露間の葛藤と異見が目につく雰囲気だった。

今回の首脳外交で、文在寅大統領の一貫した北朝鮮の核に対する立場は、対話と制裁の並行路線だった。トランプ大統領に会い、最大の圧迫と共に対話の必要性を強調した。また、習近平主席とプーチン大統領に、対話と制裁を並行する立場を強調しながら、同意を導き出そうとした。韓米日の首脳会談でも内容は同じだった。

文大統領の対話と制裁の並行論は、事実上、金大中(キム・デジュン)政府と盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府の北朝鮮政策の基調を継承するものだ。金大中政府の末期、第二次朝鮮半島核危機が勃発した当時の立場がまさに、対話と制裁の並行論だった。これを継承した盧武鉉政府もやはり、並行論を堅持しながら南北関係を維持した。しかし今は余りにも異なる状況だ。当時が、対話を維持する状況で制裁を並行するものであったならば、今は、制裁局面で対話を導き出すというものだ。言うほど簡単なことではない。

まず、既存の並行論は、南北対話と北朝鮮との核交渉が維持されている状況だった。(2000年の)南北首脳会談以降、長官級の会談が開催され、各種の交流・協力が続く中で、韓国が南北関係における影響力とレバレッジを確保していたからこそ、2002年の第二次朝鮮半島核危機の際に金大中大統領は並行論を堅持することができた。盧武鉉政府の並行論もやはり、第二次朝鮮半島核危機にも関わらず6者会談という北朝鮮との核交渉機構が作動し、最小限の南北関係が維持されていたからこそ並行論が可能であったし、結局、首脳会談も成就した。

しかし、現在の状況は全く異なる。南北関係はただ一つのチャネルも無く、完全に中断している。韓国の北朝鮮に対する主導権は言葉だけのレトリックに過ぎない。また、6者会談をはじめとする、核問題の解決のためのあらゆる交渉の枠組みも中断され、事実上廃棄されて久しい。南北関係を結ぶ綱が失われ、核交渉の枠組みが廃棄された状況で、現在のこうした並行論は非現実的であるか、空虚であるしかない。

南北対話と北朝鮮との核対話が存在する状況での並行論は、制裁にも関わらず対話の枠を維持するという意味だ。しかし、南北対話と北朝鮮との核対話が存在しない状況での並行論は、制裁を続けながら対話の意志だけを強調するに過ぎない。それも既に核を放棄しないことを宣言している金正恩に対し、核廃棄のための対話を提議するだけの今の並行論では、対話の実現可能性はほとんど無いと見るべきだ。

また、既存の並行論は、それでも北朝鮮が核の放棄と非核化という最終目的に同意した状況で可能だったものだ。金大中政府と盧武鉉政府まで、北朝鮮は南北対話と6者会談に参加しながら、少なくとも朝鮮半島の非核化という原則には同意していた。北朝鮮の核廃棄を目標に交渉が可能だった。だからこそ、対話と制裁の並行論が作動することができたのであった。

しかし今の北朝鮮は完全に異なる。核放棄を「放棄」して久しいのが北朝鮮だ。憲法と法律と、党の路線として核保有を既成事実化した北朝鮮は当然、核放棄を前提とするいかなる対話と交渉にも応じる考えがない。文大統領が構想する核開発の凍結を入口とする理論も、非核化と平和体制の並行論すらも、それが非核化を前提とする限り、金正恩は決して対話に乗り出す考えがない。変化した現実の中で、文大統領の並行論は言葉の上では可能だが、実際に作動するのは難しい状況だ。

結局、既存の並行論は、南北対話と北朝鮮との核会談が作動する状況で、北の間違った行動に対する制裁を加えながらも対話は維持するというものだった。しかし今は異なる。南北関係も北朝鮮との交渉も失われた状況で、それも核を放棄する意志がまったく無い金正恩に対し、並行論は対話を成就させる条件自体を作り出すことができない。非核化を前提とする対話の提議は、入口に入ることすら難しく、結局、今の並行論は制裁の持続と強化へと帰結するだけだ。現実が異なるならば、別の解決法を考えなければならない。既存の並行論を踏襲するだけでは始まりさえ難しい。文在寅大統領の北朝鮮核問題についての解決法は、レコード盤のような過去にとどまっていて不安だ。今は昔とは違う。

※外部寄稿者によるコラム・評論の内容は、本紙の編集方針と異なる場合があります。




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