韓国の文在寅大統領が、米国、ドイツG20(主要20か国)サミットと続いた外交日程を振り返った。G20からの帰国後はじめて開かれた国務会議の席で「北朝鮮核問題に対する韓国政府の立場に支持を得た」ことを成果とする一方、「韓国には力がない」と、今後の課題を明らかにした。(ソウル=徐台教)

文在寅大統領国務会議
国務会議に入場する文在寅大統領(中央)、李洛淵(イ・ナギョン)国務総理(右)、任鍾晳(イム・ジョンソク)大統領秘書室長)(左)。写真は青瓦台提供。

日米韓首脳会談、新ベルリン宣言などが成果

11日午前10時、文在寅大統領は国務会議を主宰した。文大統領が同会議を主宰したのは、6月27日に続き二度目となる。

国務会議は韓国の憲法で規定される「最高の国家意思決定機構」だ。国政の基本政策や、予算、軍事など重要事項を審議する。会議には大統領、国務総理をはじめ、各長官、世大統領府の大統領秘書室長や国家安保室長、ソウル市長などが参加する。

前日10日朝、ドイツから帰国した文大統領は同会議の冒頭発言を通じ、その間の外交を総括した。6月末の米国からG20サミット期間に至るまで、文大統領は9つの首脳会談を行った。

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文大統領はまず、「米国訪問に続いてG20サミットと共に、多くの単独会談を通じ、少なくない成果を得たと自評する」と切り出した。

続いて「北朝鮮の核とミサイルに対する韓国政府の立場について、全ての国から支持を得た。北朝鮮の核問題がG20の議題では無いにも関わらず、私たちが議題にあげ、国際的なコンセンサスを導くことができたのが成果」とした。G20サミットは従来、世界の経済、金融などについてを議論する。

さらに、続く成果として「韓米日によるはじめての首脳会談で、北朝鮮の核とミサイルについての共同の方案を合意できたこと」を挙げた。これは歴史上はじめて日米韓三か国の共同声明を採択した7日の晩餐会議を指す。

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さらに、ハンブルクでのG20サミットに先立つ「ベルリン訪問で、わが政府の『朝鮮半島平和構想』を明らかにしたことも大きな意味があった」と自賛した。

文大統領は「新ベルリン宣言」とも呼ばれる7月6日のベルリン・ケルバー財団で行われた演説で、「韓国のより主導的な役割を通じ朝鮮半島の平和体制を構築する」ことを宣言した。

また、北朝鮮の崩壊も吸収統一も望まず、ただ平和だけを追求するとした上で、北朝鮮に対し離散家族再会、軍事境界線での敵対行為の中断など、4つの提案を行った。

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「韓国には朝鮮半島の問題を解決する力がない」

だが、北朝鮮はこれまで積極的な反応を見せていない。文大統領も「現時点では遠く感じるが、私たちが南北関係のために努力していく方向だと思う。北朝鮮が選択する道もそれしかない。北朝鮮の呼応を期待する」と北朝鮮に呼びかけた。

一方で、韓国が置かれた厳しい現状についての分析もあった。

韓国国務会議
7月11日の国務会議の様子。写真は青瓦台提供。

まず、「北朝鮮の核問題解決の道が開かれていないという事実と、北朝鮮の弾道ミサイルによる挑発に対する制裁方案について、国際社会の合意が簡単ではない事実を厳重に受け止めなければならない」とした。

そして、「私たちが骨身にしみて感じなければならないのは、私たちにとって最も切迫した朝鮮半島の問題であるにも関わらず、現実的にに私たちに解決する力が無く、私たちに合意を導き出す力もないという事実だ」と続けた。

確かに、中国の習近平主席は韓国との首脳会談の席で「北朝鮮とは今も血盟関係」と述べるなど、これ以上の圧力強化を望まない姿勢を見せたとされる。

また、ロシアのプーチン大統領はやはり韓国との首脳会談の場で一方的に話をし、韓国に対話の主導権をなかなか渡さなかったされる。中国、ロシアとの関係は今後の大きな課題として残っている。

文大統領はさらに、「G20サミットの主要議題であった自由貿易主義と気候変化の問題について、G20は合意できなかった」とし、「各国が国益を全面に押し出す外交をしている」と指摘した。

その上で「私たちも国益を最優先に貫徹していけるよう、外交を多辺化(多角化)し、外交の力量を育てていく必要を切実に感じた」と今後の課題を明かした。




「タンジャン(今は)」という発音に注目

「韓国には朝鮮半島の問題を解決する力がない」という文大統領の発言を聞いた筆者は思わず唸らなざるを得なかった。

その間、大統領の外交行脚は韓国内で好意的に報じられ、受け止められてきた。そのため、今日の報告も自画自賛といったところに落ち着くのかと思っていたからだ。

しかし、大統領みずからが厳しい現実を直視していることを告白することで、韓国が置かれた立場がよりリアルに伝わってきた。そして、韓国が北朝鮮政策に「夢」を期待していないことがよく理解できた。韓国の外交は中・露の説得という次のステップに向けて進んで行くだろう。

個人的に注目したのは、文大統領が発言の中で「タンジャン、당장」という単語を非常に長く、そして深く発音したことだ。意図的なものか、自然にそうなったのかは分からない。

ただ、「今すぐには」を意味するこの単語をそのように発言したことは、いかに北朝鮮の核問題の解決、そして朝鮮半島の平和が難しいものであるかを端的に表していると筆者には思われた。



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