主要20か国(G20)サミットのためドイツを訪問中の中韓首脳が、ベルリンで首脳会談を行った。この席で中国の習近平主席と韓国の文在寅大統領は北朝鮮のICBM実験を非難すると共に、「制裁・圧迫と対話」を通じ北朝鮮の核問題を解決するため協力していくことを確認した。THAADについては今後の課題とした。会談の内容をまとめる。(ソウル=徐台教)

会談は当初の予定の約2倍、75分間にわたり行われる

会談の要旨は、青瓦台(韓国大統領府)の朴洙賢(パク・スヒョン)報道官が配布した記者会見時の資料を参考にする。特に記載がない限り、引用はこの資料からとなる。

現地時間7月6日午前にテーブルについた両者は、「中韓関係ならびに朝鮮半島の情勢について」意見を交換したという。「会談時間は当初40分間と決められていたが、これを延長し、75分間『真摯で虚心坦懐に』議論した」とのことだ。

中韓首脳会談
首脳会談を行う両国高官。左手前から三人目が文在寅大統領、右手前から二人目が習近平国家主席。写真は青瓦台提供。

この日の話題を要約すると、▲北朝鮮への対応、▲南北関係、▲THAAD配置・中韓関係に分けられる。

北朝鮮への対応「ICBMの発射を容認できない」

まず、7月4日に行われた北朝鮮によるICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験については「これを容認することはできない」という点を再確認し、「北朝鮮の核問題の根源的な解決の向けて緊密に共調していく」点で一致した。。

文大統領は「国際社会が制裁および圧迫を通じ、北朝鮮の態度変化を誘導すると同時に、北朝鮮の核問題を平和的に解決するための努力を傾けることが必要だ」とし、「中国に国連安全保障理事会の議長国として、指導的な役割をしてくれること」を要望したという。

また、「G20サミットは経済問題を扱う場であることは理解しているが、重大な(北朝鮮)問題を論議しないことは適切ではない、参加した首脳たちが北朝鮮に対する制裁、圧迫とともに、対話を通じた平和的解決のために共同の努力を傾ける意志を表明することが必要」と態度を表明したとのことだ。

韓国政府が今回のG20サミットをどのように位置づけているのかが垣間見える一節だ。

これに対し習国家主席は「中国は北朝鮮に対する安保理決議を完全に履行するために努力中」と説明し、「北朝鮮のミサイル開発を阻止するため、最大限の努力中だ」と続けた。

その上で「今回のミサイル発射が重大な事案であることを鑑み、G20会議期間のあいだ、首脳間の共同認識を導き出すことに協力的な姿勢で臨む」と韓国側に配慮した。さらに「国連安保理の次元での措置と関連しても今後、関連国と緊密に協議しながら適切な方案を調節していく」と語ったという。




「北の核とミサイルは東北アジア域内の脅威」

また両首脳は「北朝鮮の核とミサイル保有が、中韓両国はもちろん、朝鮮半島と東北アジア域内の安定と平和への脅威になる」との認識を共にした。さらに「この問題を根源的に解決するため、共通の努力を傾ける原則に合意した」とのことだ。

中韓の歩調を合わせる努力はなおも続いたようだった。

中韓両国は「朝鮮半島の非核化という目標の達成が共通の目標であることを再確認」し、そのために「より強力な制裁と圧迫を通じ、北朝鮮が追加挑発を行えないようにする一方、正しい選択をすることで、対話を通じた平和的な解決に応じるよう誘導する」戦略を確認したとする。

これを実現するために「中韓両国がすべての段階におよぶ疎通と協力を強化していくことで意見を共にした」という。

南北関係は「文大統領の主導的努力を支持」

一方、習金平主席は、「南北対話の復元および南北間の緊張緩和を通じ、朝鮮半島に平和を定着させたい文大統領の主導的努力を支持し積極的に協力していく」と語ったとされる。

「主導的」というキーワードは6月末に米国のトランプ大統領と文大統領が発表した「米韓共同宣言」にも含まれていた。韓国の立場では朝鮮半島の平和統一における主導権を米国、中国から「認めてもらった」ことになる。

習国家主席はさらに「信頼と忍耐を土台に、南北が和解と協力を通じ、自主的で平和的な統一の基盤を作っていくことに期待する」とした平和的な解決を呼び掛けた。




THAADをめぐる葛藤は「正常化への共感」にとどまる

一方、中韓最大の懸案になっている韓国側によるTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)の導入については、直接的な言及は避けた。代わりに「両国間で異見のある部分」と表現された。

やはり「虚心坦懐に意見が交換された」とし、「互いの理解増進のために高位級チャンネルを通じてなど、多様な疎通を強化していくことに合意した」としている。

文大統領は「各種の制約により、現実的に両国間の経済・文化・人的交流が委縮していることが事実」と指摘した。これは昨年来続いている、韓国のTHAAD配備に対する中国の報復措置を指すものだ。中国からの観光客が減り、中国で展開する小売業も大きな打撃を受けた。

文大統領はさらに「こうした状況が続いていることが、両国民間の関係発展に及ぼす影響を考え、各分野での交流協力がより活性化するよう」習国家主席の関心と支援を要望した。

これに対し習国家主席は「中国民の関心と憂慮を考慮しないわけにはいかないが、両国間の交流教育が正常化され、さらにより高い次元へと拡大することを希望する」と肯定的に答えたとのことだ。

なお、中韓首脳会談を詳しく伝えた韓国の通信社・聯合ニュースの記事(該当記事リンク)によると、「両首脳はTHAADの話をし、今まで堅持してきた互いの立場を話し合った」という。そして「『THAAD』と表現する代わりに『両国間で異見の存在する部分』とすることで合意した」と、青瓦台関係者のコメントを載せた。

この関係者によると「文大統領はTHAAD配置が主権であるという話はせず、手続き上の正当性確保と共に、THAAD問題が北朝鮮の核・ミサイル挑発に拠るものであるため、我々が手続きの正当性を主張し時間を確保し、その間に北朝鮮の核凍結など解法を探し出せれば、結果的にTHAAD問題を解決できる」と、これまでの論理を習国家主席に説明したという。

総評:原則の共有というラインをクリア

米韓首脳会談に比べ、事前の意見調節の濃さや会談時間などで扱いに差があった中韓首脳会談だが、互いの「顔みせ」という観点からは大きな衝突も無く、成功裏に終わったと評価できる。

文在寅大統領と習近平国家主席
7月7日、ベルリンで会談した中韓首脳。韓国の文在寅大統領(左)と、中国の習近平国家主席(右)。写真は青瓦台提供。

「お互いの理解と尊重を土台に『戦略的な協力同伴者関係』を一段階高い水準に発展させていくことで合意した」という点は重要だ。

朝鮮半島で緊張が高まる中でも平和的な解決、対話を通じた解決を行うという「原則」への同意が得られたことも大きい。文在寅政権としては今後、一層の「主導的役割」を果たすことが可能になった。

ただ、これまで別の記事でも繰り返してきたように、北朝鮮が呼応しない以上、韓国の主導的役割は意味をなさない。米国・中国が共通の北朝鮮情勢認識の下、北朝鮮に対し韓国との対話を促していくのかが、今後のポイントとなるだろう。

中韓最大の懸案となってしまったTHAADについては、米国側への説明との「二枚舌」が明らかになったことが気がかりだ。

米国に対しては「あくまで手続き上の正当性」(CSIS演説)と強調しておきながら、中国に対しては「正当性は時間稼ぎ」と弁明している。韓国の困難な立場を表しているとも言えるが、今後も火種としてくすぶることは避けられそうにない。

[全訳] 「偉大な同盟は平和を導く同盟」文大統領、米韓同盟を土台に北朝鮮核問題の解決誓う [6月30日米CSIS演説]

となると今後、どのタイミングで文在寅大統領が訪中するかが注目される。両首脳はこの日の会談で「文大統領が中国を訪れ、習国家主席が平昌(ピョンチャン)冬季五輪に訪問する」ことを互いに要請している。

中韓修交25周年となる8月下旬に文大統領が北京を訪ねる可能性もあるが、それまでの間に、北朝鮮が新たな核・ミサイル実験を行う可能性もある。韓国としては「動けるうち」に動いておきたいところだろう。




この記事が気に入ったら
いいね ! をお願いします。

Twitterで編集長・徐台教を