4日の北朝鮮によるICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験を受け、韓国政府は声明を発表し「これ以上の無謀な挑発を即時中断」するよう求めた。だが「制裁と対話」という政府の基調を維持することを統一部が言明した。(ソウル=徐台教)

「強く圧迫・制裁をしながらも対話の門は開けておく」

5日午前にソウル市内の政府中央庁舎で行われた定例会見には、北朝鮮のミサイル発射実験翌日とあって、通常より多い十数人の記者が詰めかけた。

会見は順序通り、統一部長官、次官の日程を説明したあと質疑応答に移ったのだが、なんと質疑応答に手を上げる記者はゼロ。会見が開始1分半で終わりそうになったため、慌てて筆者が質問を行った。

統一部の李徳行報道官
7月5日、定例記者会見を行う統一部の李徳行報道官。筆者撮影。

まず、4日の聯合ニュース「韓国大統領府『制裁と圧力続けるも対話基調は維持』(該当記事リンク)を引用し、「制裁と圧力を継続しながら対話をしていく基調」を統一部がどう捉えているかを聞いた。

これに対し統一部の李徳行(イ・ドッケン)報道官は「北朝鮮政策に関して政府の基調に変化はない」と明確にするとともに、「平和な朝鮮半島を作るためには、北朝鮮の核問題を平和的に解決し、同時に南北関係を発展させていくことが必要」と答えた。

さらに「北朝鮮の挑発に対しては強く圧迫・制裁をしながらも、対話の門を開いていくという既存の構想には大きな変化がない」と付け加えた。

これは、文在寅政権の北朝鮮政策がICBMの発射を受けても続いていくことを示している。

李明博・朴槿恵政権の「核放棄が対話の入り口」策ではない、「核問題と対話(南北関係)を同時に進めていく」戦略は当面も維持される模様だ。ただ、国連安全保障理事会による制裁が強まることは確実で、韓国もこれに同調することになる。




「レッドラインは秘密」

続いて筆者は、「統一部にとっての『レッドライン』は何か」と質問した。

文在寅大統領は4日午後、青瓦台(大統領府)でキャメロン前英国首相と会談した際に「北朝鮮が米韓首脳が合意した平和的な方式の朝鮮半島非核化構想に応じず、レッドラインを超える場合、我々がどう対応するか分からない」と強い口調で語っており、気になるところだ。

キャメロン前英国首相と文在寅大統領
4日午後、青瓦台で文在寅大統領と会談するキャメロン前英国首相。日刊紙・朝鮮日報主催の「ALC(アジア・リーダーシップ・カンファレンス)」に出席するため韓国を訪れた。写真は青瓦台提供。

李報道官はこの質問に対し「レッドラインを公開するしたら、それはレッドラインでなくなってしまう。特別なレッドラインを設けてはいない」と答をはぐらかせた。

一般的にレッドラインとは、米本土への核攻撃を行える技術を北朝鮮が備えることと見られている。核弾頭の小型化の完了やICBMの完成が含まれるが、この場合、米国が北朝鮮への先制攻撃をしかける口実になる、というものだ。

ただ、こうした「枠」を設けることについて、疑問を呈する声もある。

通常の大統領職引継委員会にあたる「国政企画諮問委員会」で外交安保文科委員を務める北朝鮮専門家の金榕炫(キム・ヨンヒョン)東国大教授は、「現在、議論されているレッドラインは、北朝鮮に対する抑止力の次元で見るのが正しいと見る」とし、「万が一、実際のレッドラインを設定した場合、我々が戦略的に動ける余地が無くなってしまう」と5日、聯合ニュースに語っている(該当記事リンク)。

「北朝鮮住民接触許可の内訳は非公開に」

最後に筆者が質問したのは、ミサイル発射当日の4日に統一部が承認した北朝鮮住民との接触についての具体的な内容だった。やはり聯合ニュースの記事を参考にした。(該当記事リンク

これについて李報道官は「接触申請はあくまでも個人の申請である上に、情報が公開された場合、接触を進める上で障害になる場合もあるため、今後は公開しないことにした」と答えた。

さらに「(文政権発足)初期には、南北関係の変化動向を知らせるために、詳細を公開していた」と明かした。前出のニュースによると、現在まで接触が承認された件数は50件にのぼるという。

5月26日が1件目の承認だったことを考えると、一日一件を超えるペースで承認されていることになる。民間交流や人道支援を通じ対話の軸を構成したい韓国側の姿勢が如実に現れているといえる。




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