現地時間6月30日、米ワシントンで米韓共同宣言が発表された。同宣言の内容を見ると、文大統領は朝鮮半島問題における韓国の役割を認めさせる成果を上げた。詳細を分析するとともに今後の課題を見通した。(ソウル=徐台教)

米韓共同宣言の中での北朝鮮政策

米韓共同宣言は以下の六項目で構成されている。

(1)米韓同盟の強化
(2)北朝鮮政策における緊密な共調を続ける
(3)経済成長を促進するための公正な貿易の発展
(4)その他の経済分野における協力の増進
(5)グローバル・パートナーとしての積極的な共調
(6)同盟の未来

[全訳] 米韓共同声明 [2017年6月30日、ワシントン]

米国は「経済」、韓国は「対北」…米韓首脳会談・共同記者会見要旨

この中で、最も比重が置かれている部分は米韓同盟の未来像についてだ。安全保障、経済、国際協力などの分野で、今後も米韓同盟を強化していくという内容が具体的に記されている。(1)、(5)、(6)がこれに当たる。

次に、多くの文字数が割かれているのが(2)の北朝鮮政策だ。そして、特にトランプ大統領が気にする経済不均衡の問題が(3)に、社会的、経済的な結びつきを強めるための官民交流拡大が(4)の内容にそれぞれ含まれている。

この記事では(2)の北朝鮮政策を中心に見ていくことになるが、先に結論を述べておく。

それは、北朝鮮政策が宣言全体の枠組みの中に位置していることを決して忘れてはならないということだ。米韓同盟がより公正な形で強固になる中で、北朝鮮政策への共調がある。

現に、トランプ大統領は南北共同宣言に先立つ合同記者会見で、発言の半分以上を在韓米軍の駐留費用や米韓の貿易不均衡など、経済的な部分に割くなど、本質的な関心がどこにあるのかを意図的に示した。

韓国としては、北朝鮮政策への共調と引き換えに、国際社会でより米国側に立つことを求めるトランプ大統領の要求に今後、応え続ける必要がある。韓国にとって避けられない前提だが、中国、ロシアとどのような関係を構築していくのかが、今後の焦点となる。

文在寅大統領とトランプ大統領握手
6月30日(現地時間)、共同記者会見を終えて握手する文在寅大統領とトランプ大統領。写真は青瓦台提供。

「制裁と対話」を再確認

北朝鮮政策ではまず、「完全で検証可能かつ、不可逆的な朝鮮半島の非核化」が米韓共同の目標であることが再確認されている。

さらに「弾道ミサイル試験発射が多数の国連安保理決議に対する直接的な違反」であり、核・弾道プログラムが「国際平和と安全保障に対する脅威の加速化」を呼び起こしていると指摘した。

その上で「挑発的な行為を中断し、真摯で建設的な対話の場に復帰するよう」、「新しい措置を施行」すると明らかにした。なお、この「新しい措置」というのが何なのかは具体的に提示されていない。

おそらく今後韓国が米国をはじめとする国際社会と共調しまとめていく、北朝鮮への「条件提示」を含む新たなアプローチを指すと思われる。

声明は次に「北朝鮮が信頼できる非核化の交渉に復帰するよう、北朝鮮を外交的・経済的に圧迫している世界の諸国の建設的な役割を肯定的に評価」した。これはあくまで文政権が「対話」に傾くことはないという姿勢を示している。

これは続く「制裁が外交の手段であるという点に注目しながら、正しい環境の下で北朝鮮と対話の門が開いている点を強調した」という部分でも明らかになっている。制裁は対話のための手段であり、対話に応じない場合に制裁は続く、ということだ。

さらに「米韓両国が共に北朝鮮の核問題解決に最優先の順位をつけている点を再確認する」という一文で強い意志を明かしてる。

「両首脳は韓国と米国が北朝鮮に対し敵対視する政策を持っておらず、北朝鮮が正しい道を選択するならば、国際社会と共に北朝鮮により明るい未来を提供する準備ができている」という部分は、北朝鮮に向けたメッセージといえる。

これらは北朝鮮政策における米国の4つの原則「核保有国と認めない」、「あらゆる北朝鮮への制裁と圧迫を加える」、「(金正恩氏の)政権交代を推進しない」、「対話で問題を解決」を再確認したものといえる。




韓国の主導的役割を支持 人権提議も不可避

また声明は「トランプ大統領は朝鮮半島の平和統一の環境を醸成することについて、韓国の主導的な役割を支持した」とした。この一文は韓国にとって今後、テコとして様々に活用可能な、今回の文大統領訪米における最大の成果といえる。

「平和」が入っていることで、米国を含む国際社会の武力行使をけん制でき、米朝直接対話を望む北朝鮮側に対し、「対話の入口」としての韓国の立場を明確にする役割もある。また、統一という到着点(いつになるかは分からないが)も明示できた。

だが、対話の内容にも要求がついている。「両首脳は北朝鮮政権によって行われる凄惨な人権侵害と蹂躙行為を含め、北朝鮮住民の安為に対し深い憂慮を表明」という部分からは、人権問題を議題に乗せることが求められていると見てよい。

「悪い警察=制裁」を米国が担当し、「良い警察=対話」を韓国が担当するにしても、人権問題は共通の話題となることを避けられないだろう。

続く「北朝鮮の脆弱な階層の人々に対する北朝鮮制裁の影響を最小化するようにする」という部分は韓国による人道支援が今後、活性化することを暗示している。韓国とすれば、対話を活性化させる「テコ」が増えることになる。

さらに、「トランプ大統領は人道主義的事案を含めた問題に対する南北間対話を再開しようとする文大統領の熱望を支持した」という一文も韓国側としては大きな成果だ。

韓国は制裁(圧迫)という国際社会の枠組みの中で、北朝鮮との対話を行うお墨付きを得ることができた。これにより、統一部が繰り返してきた「制裁局面を毀損しない中で南北対話を続ける」という文政権の立場に弾みがつく。

そして「両首脳は責任の糾明および北朝鮮の嘆かわしい人権状況の実質的な改善のために、国際社会と協力することが重要だということを再確認した」という一文が続く。繰り返しになるがもはや人権問題を避けて通れないことが読み取れる。

文大統領は「人権を語ると南北関係が傷つく」という従来の進歩派のナイーブなアプローチを改善していく必要があるだろう。

最後の部分では日米韓の三国の結びつきが強調された。「三国の安保および防衛協力が北朝鮮の脅威に対応し、抑止力と防衛力の増進に寄与している」とした上で、「既存の両者および三国間メカニズムを活用することで、こうした協力をより発展させていくことにした」とし、日本との防衛連携の強化を予告した。

これは対話と制裁を可能にする「北朝鮮に核・弾道ミサイルを使わせない抑止力」の強化が、より一層進むことを意味する。

そして「文大統領とトランプ大統領は、来たる7月のG20首脳会議の場で開催される日米韓三国首脳会議で安倍総理と共に、三国協力をより進展させるための方案を議論することにした」と今後のガイドラインを定めた。

文在寅大統領とブレアハウス
文在寅大統領が滞在していたワシントンの「ブレアハウス」に記帳した。「意味のある会談でした。気持ちよく滞在して帰ります。温かい歓待に感謝します」とある。文在寅大統領と金正淑(キム・ジョンスク)夫人が署名した。写真は青瓦台提供。

文大統領を待ち構える国内外での説得作業

見てきたように、北朝鮮政策に限る場合、文大統領は満額回答を得たと見てもよい。北朝鮮との対話努力が一蹴されるかもしれないという不安も一部にあったが、結果としては粘りが功を奏した形だ。

だが、冒頭で述べたように、同時に米韓同盟のさらなる強化、トランプ大統領の言う「経済不均衡」の解消、防衛力強化、グローバル問題へのさらなる関与などが求められる。

韓国としては、南北問題前進のために今後、多大なコストを払うことが明確になったといえる。こうした内容を今後、韓国の国民にどこまで納得させられるかが課題となる。

特に、文大統領の支持基盤である進歩層では、THAAD配備の見直しなど「米国に物言う文大統領」を期待していた節もあり、米国に「ベッタリ」とも取られ兼ねない、リアリスティックな文大統領の選択がどう評価されるか注目される。THAADに対する言及は無かった。

また、日本との関係においても、喫緊の懸案となっている慰安婦合意の見直しとは別に、対北朝鮮への連携でどこまで歩調を合わせられるか、韓国側の外交努力が求められる。同時に、中国に対しても今後、同様に韓国の立場を説明する努力が続くことになる。

韓国の外交はイバラの道である。ただ、昨年10月以降、朴槿恵前大統領の弾劾・早期大統領選という非常事態に経て不安定になっていた最大の同盟国・米国との外交関係が復元された意味は大きい。

とはいえ、北朝鮮の反応は未知数だ。当分はこれまでのように、韓国を袖にする反応を続けると筆者は見る。今後、文大統領の忍耐力はこちらで試されることになるが、焦りは禁物だ。




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