15日、南北首脳初の共同宣言である2000年の「6.15南北共同宣言」17周年を記念する式典が開かれ、文在寅大統領が出席し、祝辞を述べた。文大統領は北朝鮮に対し、対話の提案を行うと同時に、南北間合意の意志を示すよう要求した。(ソウル=徐台教)

[全訳] 6.15南北共同宣言(2000年6月15日)

記念式典には与野党議員など900人が参加

午後6時から国会を抱くソウル市内の汝矣島(ヨイド)の63ビルで行われた記念式典には、文在寅(ムン・ジェイン、64)大統領をはじめ、故金大中(キム・デジュン)大統領夫人の李姫鎬(イ・ヒホ、94)女史、朴元淳(パク・ウォンスン、61)ソウル市長、さらに秋美愛(チュ・ミエ、58)共に民主党代表、朴智元(パク・チウォン、75)国民の党代表、沈相奵(シム・サンジョン、58)正義党代表など与野党の有力政治家が出席した。

「6.15南北共同宣言」17周年記念式典の様子
「6.15南北共同宣言」17周年記念式典の様子。華やかな雰囲気で行われた。6月15日筆者撮影。
朴柱宣、秋美愛、沈相奵
会場には有力政治家の姿も多く見られた。国民の党の朴柱宣議員(中央)に近づき何かを頼みこむ共に民主党の秋美愛代表(左)。正義党の沈相奵代表(右)が笑って見守っている。紛糾する長官の人事聴聞会での善処を頼み込むパフォーマンスだろう。筆者撮影。
朴元淳ソウル市長
この日は朴元淳ソウル市長(左から二番目)も祝辞を述べた。右から二番目は朴昇(パク・スン)元韓国銀行総裁。筆者撮影。

会場にはこの他にも元政治家、公務員、学者など約900人が詰めかけ、終始和やかな雰囲気だった。なお、式典はソウル市の後援の下、金大中平和センター、延世大学金大中図書館などの主管で行われた。

当初、出席が伏せられていた文大統領が李姫鎬女史と共に入場するや、会場は大拍手に包まれた。文大統領は続いて、10分ほどの祝辞を述べた。

李姫鎬女史
入場する李姫鎬女史。94歳と高齢のため車いすに乗っていたが、会場の拍手に元気に応えていた。後ろに文在寅大統領の姿も。筆者撮影。

文大統領「北は核開発を放棄し国際社会と協力すべき」

祝辞は「李女史が平和を成し遂げた朝鮮半島を見るのが私たち皆の喜びになる」と、高齢の李女史の健康を願う内容から始まった。

故金大中大統領に対しても「『行動する良心』として真の勇気を見せてくれた。分断後初の南北首脳会談を行い、南北関係の大転換を導いた」と、賛辞を惜しまなかった。

さらに「今日、私たちが面している危機を解決するためにも、南北関係は新たに定立され発展しなければならない」と続け、本論に入っていった。

文在寅大統領
祝辞を述べる文在寅大統領。ゆっくりと力強い口調で語りかけた。筆者撮影。

まず「北朝鮮による核とミサイル開発が地域と国際社会の平和と安定を脅かす深刻な憂慮として台頭している」とし、北朝鮮に対し「核開発を放棄し、国際社会と協力する道を探すべきだ」と要求した。

その上で、「金大中大統領が北朝鮮の核と挑発を認めないという原則を守りながら南北関係の発展を成し遂げたように、私たちも新しい大胆な構想と意志を以て解決していかなければならない」と抱負を述べた。

興味深かったのは1972年の7.4南北共同声明や1991年の南北基本合意書、そして6.15南北共同宣言や2007年10.4南北首脳宣言などの「南北当局間の合意が国会で批准されていれば、政権の浮沈により対北朝鮮政策が上下することはなかった」というくだりだ。

就任後繰り返してきたように、今後、北朝鮮側と新たな合意(南北基本協定)を結んだ上で、上記合意の内容と合わせて法に落とし込んでいくものと見られる。




南北間の諸合意を強調

文大統領はまた、「6.15共同宣言は南北問題の主人がわが民族であることを明らかにし、10.4宣言(2007年)では、南北の軍事的敵対関係の終息、朝鮮半島での緊張緩和と平和保障のため緊密な協力を約束した」とし、「6者会談の『9.19共同声明』と『2.13合意』に核問題の解法がすべて含まれており、国民が安心できる約束が込められている」と、原則に立ち返ることを強調した。

「9.19共同声明」とは第4次6者会談最終日の2005年9月19日に、中国、北朝鮮、日本、韓国、ロシア、米国間で持たれた合意のこと。北朝鮮は「すべての核兵器と現存する核計画を放棄し、NPT(核拡散禁止条約)とIAEA(国際原子力機構)の安全措置に復帰すること」を公約し、他の5か国は代価としてエネルギー支援を行うことを約束した。

任鍾晳大統領秘書室長
青瓦台(大統領府)の面々も。朴智元国民の党代表(左端)と言葉を交わす任鍾晳(イム・ジョンソク)大統領秘書室長(左から2番目)。筆者撮影。

一方、「2.13合意」は2007年2月の第5次6者会談でなされたものだ。

「9.19共同声明」が履行されず、逆に2006年10月に北朝鮮が初の核実験を行い朝鮮半島に緊張が高まる中、「北朝鮮は寧辺核施設を閉鎖、封印しIAEAのあらゆる監視および検証活動を受け入れるため、IAEAの要員を招待する」とした。

その上で「日本(保留)以外の4か国が60日以内に重油5万トン相当のエネルギー支援を、さらにすべての核施設の不能化を行う場合、さらに重油95万トン相当の経済、エネルギー、人道支援を行う」という具体的なアクションプランまでを含んでいた。

文大統領はこれらの合意を「南北が共に発展できる方案のすべてが含まれている」と評価しつつ、「核とミサイルの高度化で言行不一致なのは北朝鮮だ」と再度指摘した。




新たな提案「追加挑発中断で対話に乗り出す」

そして文大統領は「私たちは私たちなりに努力するので北朝鮮もそうするべきだ。北朝鮮の核放棄という決断は南北間合意の履行意志を見せる証拠であり、これを実践する場合積極的に支援する」と前置きし、「北朝鮮が核とミサイルの追加挑発を中断するならば、北朝鮮と条件無しに対話に乗り出すことを明らかにする」と核心に迫った。

さらに「私は膝を突き合わせて、どのように既存の南北間の合意を履行していくのかを協議する意志がある」と語りかけ、「北朝鮮の核の完全な廃棄と朝鮮半島の平和体制の構築、そして米朝関係の正常化まで包括的に論議できる」と今後に含みを持たせた。

千海成統一部次官
会場には政府高官の姿も。文大統領の祝辞に聞き入る千海成(チョン・ヘソン)統一部次官。筆者撮影。

祝辞の後半部では、国内向けに今後のビジョンを示した。特に「あまりにも長いあいだ(南北関係が)閉じていた。南北をつなぐ道だけが閉じていたのではなく、私たちの心まで閉じてしまったのかもしれない」、「わが青年たちの想像力が朝鮮半島の北側を超え、ユーラシアまで伸びるように手伝っていく」というくだりは南北問題に関心が比較的薄い、青年層に向けたメッセージとも取れる。

文大統領が最後に「6.15南北共同宣言に込められた夢が実現するよう共に努力しましょう」と呼びかけ祝辞を終えると、会場ではふたたび拍手が沸き起こった。

「『中断』は『凍結』への出発点」という見方も

この日の文大統領の提案について、韓国のメディアや専門家は「強いメッセージ」(ノーカットニュース)と見る向きが強い。従来の「凍結」ではなく「中断」という、北朝鮮にとって主観的に解釈可能とも取れる条件を設定したことで、北朝鮮側の対応が注目される。

過去、国家人権委員会で北朝鮮担当官を務め、南北関係に詳しいソウル大学平和統一研究所の徐輔赫(ソ・ボヒョク)研究教授は「文大統領のは発言は『非核化』と『南北関係』を並行して発展させるという意志を明かしたもの。既存の対北朝鮮政策と大きな差がある」と評価した。

また「決して韓国側の譲歩ではない。非核化の完成過程ではなく、推進過程で対話するという強いメッセージだ。最大の関与(engagement)政策といえる。『中断』は核開発凍結に向かう出発点と見ればいい」と分析した。

林東源元統一部長官
金大中政権下で北朝鮮との交渉をまとめた林東源元統一部長官(右端)の姿も。

北朝鮮は去る14日、祖国平和統一委員会の声明を通じ「朝鮮半島の先鋭な緊張関係を解消するための措置から早急に行われるべきというのが、我々の変わらない立場」と主張した。

さらに「南朝鮮(韓国)が本当に平和を望むのならば、朝鮮半島の平和における最も強固で現実的な担保である、我々の自衛的核武力について無知な批判を行うのではなく、米国の侵略的で好戦的な妄動を遮断するための措置から行うべき」と6月29日、30日(現地時間)に米国で予定されている米韓首脳会談を見据えた主張も行っている。

現在、統一部長官の任命も行われていない中、今後、この日の文大統領の提案が具体性を帯びるにはまだ時間がかかるだろう。だが、米韓首脳会談で「朝鮮半島問題における韓国の積極的関与」が議題にのぼる可能性は高いものと見られ、その帰趨が注目される。




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